「多頭飼育問題」について考えていくにあたり、Hoarding of Animals Research Consortium(HARC)による「アニマルホーディング」の定義について説明しておきます。
ホーディングとは
一般的に「ホーディング」(hoarding) とは,「他の人にとってほとんど価値がないと思われるモノを大量にため込み,処分できない行為」と定義されています※1。ホーディングにつながる精神疾患として、”Compulsive hoarding”(強迫的ホーディング)と”Diogenes syndrome”(ディオゲネス症候群)が挙げられます。
Compulsive hoarding(強迫的ホーディング)
強迫的ホーディングは、アメリカ精神医学会の”Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders:DSM”(精神疾患の診断・統計マニュアル)の第5版(DSM-5)において”Hoarding Disorder”(ためこみ障害)と定義されている、狭義のホーディングです。これはかつて「強迫性障害(OCD)」の一症状とされていましたが、必ずしもイコールではないことがわかっています。
Diogenes syndrome(ディオゲネス症候群、または老年期隠遁症候群)
「ディオゲネス症候群」とは、社会と孤立した高齢者が、身だしなみや衛生面に無頓着となり (セルフ・ネグレクト)、不要な物をため込むことによって生活環境が極端に悪化する病態を意味し、ホーディングにつながる重要な精神疾患の一つとみなされています※1。
アニマルホーディングの定義
HARCは”Compulsive hoarding”や”Diogenes syndrome”がホーディングの重要な要因であるとしながらも、そういった人が動物を飼っていたとしても、それがすなわちアニマルホーディングではないとしています。そしてアニマルホーディングの定義としてこの4つを挙げています※2。
・Having more than the typical number of companion animals.
通常よりも多くのコンパニオンアニマルを飼っている。
・Failing to provide even minimal standards of nutrition, sanitation, shelter, and veterinary care, with this neglect often resulting in illness and death from starvation, spread of infectious disease, and untreated injury or medical condition.
最低限の栄養、衛生、すみか、獣医療ケアが提供されず、そういったネグレクトの結果、飢餓、感染症の蔓延、未治療の怪我や病状による病気や死を招くことが多い。
・Denial of the inability to provide this minimum care and the impact of that failure on the animals, the household, and human occupants of the dwelling.
こういった最低限のケアを提供できないことや、そのことが動物、家庭、人間の家族に与える影響を否定すること。
・Persistence, despite this failure, in accumulating and controlling animals.
このように失敗しても、動物をため込み、コントロールすることに執着する。
※1 池内裕美「モノをため込む心理:誰が,何を,なぜため込むのか?」廃棄物資源循環学会誌,Vol. 28, No. 3, pp. 186 -193, 2017
(ホーディングについて非常にわかりやすく解説されており、HARCのホームページの内容を理解するのに役立ちます)
※2 https://vet.tufts.edu/hoarding/faqs-hoarding/