多頭飼育による3つの影響 ①飼い主の生活状況の悪化

環境省の「ガイドライン」は、動物の多頭飼育によって ①飼い主の生活状況の悪化 ②動物の状態の悪化 ③周辺の生活環境の悪化 といった影響が生じている状況を「多頭飼育問題」としています。

 

 飼い主の生活状況の悪化

飼い主の生活状況の悪化には、①生活環境の悪化 ②経済状況の悪化 ③人間関係の悪化 が含まれます。「ガイドライン」にはこう記載されています。

 

生活環境の悪化

動物の数が飼い主の飼育管理能力を超えると、動物の糞尿や食べ残しの餌等の清掃や処理が行き届かなくなります。これらの堆積によって、生活空間の物理的な圧迫やごみの散乱による生活環境の汚染のほか、臭気や害虫、ねずみ等の衛生動物の発生にもつながり、飼い主の生活環境における適正な衛生状態を保つことが困難になります。また、このような不衛生な環境に身を置き続けることで、真菌による皮膚糸状菌症や犬ブルセラ症といった感染症の発生を招き、飼い主及び同居者の健康が損なわれることが考えられます。(「ガイドライン」P5)

 

(のらぬこ注)なぜここで多頭飼育下で発生する人獣共通感染症として「皮膚糸状菌症」や「犬ブルセラ症」が例示されているのかについて補足説明しておきます。皮膚糸状菌症は多頭飼育のストレス下で発生・悪化しやすい病気の代表格です。人間に感染すると「たむし」や「しらくも」などの原因になります。また犬ブルセラ症は感染した犬の流産胎子や体液、排泄物から感染し、特に出自不明の犬を多数飼育し繁殖制限していない場合に蔓延するおそれがあります。

 

経済状況の悪化

また、動物の餌や衛生用品にかかる費用をはじめとする飼育コストの増大に伴い、飼い主の経済状況が逼迫すると、飼い主の生活環境の基本である衣食住そのものの状態の悪化(身体や衣服の汚れの放置、栄養状態の悪化、多頭飼育に起因する住居の損傷の放置、家賃滞納による退去要請等)を引き起こす可能性があります。(「ガイドライン」P5)

 

人間環境の悪化

さらに、飼い主の生活環境悪化の影響が周辺環境にも及ぶことにより、近隣住民との関係に軋轢(あつれき)が生じ、地域における飼い主の孤立、もしくは飼い主の人間不信に発展する場合もあります。人間不信になると、他者との円滑なコミュニケーションや信頼関係の構築が阻害され、必要な支援を求めることも受けることも困難になることから、飼い主の生活環境がさらに悪化することが懸念されます。(「ガイドライン」P5)

 

ペットの生活は飼い主に完全に依存しています。すなわち飼い主の生活状況の悪化は動物の状態の悪化に直結するのです。