環境省の「ガイドライン」は、動物の多頭飼育によって ①飼い主の生活状況の悪化 ②動物の状態の悪化 ③周辺の生活環境の悪化 といった影響が生じている状況を「多頭飼育問題」としています。
多頭飼育問題解決のゴール
では、どうなれば多頭飼育問題が「解決」したといえるのでしょうか。「ガイドライン」ではこう記述されています。
多頭飼育問題の解決とは上記の3つの影響が改善され、かつ、飼い主が多頭飼育問題を再び生じさせることなくその地域において生活を維持している状態を実現することとするのが適切と考えられます。(「ガイドライン」P6)
連携と協働の重要性
そのためには、多頭飼育問題の早期探知と早期介入が必要であるとされています。
上述のとおり、多頭飼育問題は、飼い主や動物のみならず、飼い主の家族や周辺の近隣住民の生活環境にまで影響を及ぼすものであるため、問題が深刻化する前に、飼い主の生活環境、動物の飼育環境、周辺の生活環境における悪化の状況を早期に発見・把握し、それらの状況の改善・解消に向けた対策を講じることが求められます。(「ガイドライン」P6)
タイトルからもお分かりのとおり、「ガイドライン」の主題は多頭飼育問題の予防と解決に向けた取組を進めるための、多様な関係主体が連携・協働の重要性にあります。ちなみにこの「ガイドライン」は、令和元年改正の際に追加された動物愛護法第41条の4に基づく「技術的助言」です。
国は、動物の愛護及び管理に関する施策の適切かつ円滑な実施に資するよう、動物愛護管理担当職員の設置、動物愛護管理担当職員に対する動物の愛護及び管理に関する研修の実施、動物の愛護及び管理に関する業務を担当する地方公共団体の部局と畜産、公衆衛生又は福祉に関する業務を担当する地方公共団体の部局、都道府県警察及び民間団体との連携の強化、動物愛護推進員の委嘱及び資質の向上に資する研修の実施、地域における犬、猫等の動物の適切な管理等に関し、地方公共団体に対する情報の提供、技術的な助言その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする。(赤字筆者)
繁殖制限の法制化
多頭飼育問題等の問題に対応するため、令和元年改正の際に動物愛護法第37条にこのような規定が設けられました。
犬又は猫の所有者は、これらの動物がみだりに繁殖してこれに適正な飼養を受ける機会を与えることが困難となるようなおそれがあると認める場合には、その繁殖を防止するため、生殖を不能にする手術その他の措置を講じなければならない。(赤字筆者)
多頭飼育が不適正飼養につながりかねない場合は、この規定に基づき避妊去勢手術等を飼い主に指導することになります。繁殖制限こそが多頭飼育問題解決の肝であると私は考えています。