多頭飼育問題の解決に向けて ②飼い主の生活支援

多頭飼育問題解決のためには「3つの影響」、すなわち①飼い主の生活状況の悪化 ②動物の状態の悪化 ③周辺の生活環境の悪化 をそれぞれ解決していく必要があります。それぞれについて、環境省の「ガイドライン」を見ていきましょう。

 

飼い主の生活支援

多頭飼育問題を引き起こす飼い主は、精神的・身体的・経済的な問題を抱えていることがあります。アンケートによれば、一部の飼い主は認知症、知的障害、精神障害等を有し、又は有する可能性があり、判断力の不足によって適切な飼育管理ができていないと考えられます。加齢により飼い主の体力や判断力が低下し、動物を適切に飼育することができなくなる場合もあります。また、経済的に困窮した事例では、動物の餌代のために借金をする、家賃の滞納のため住居から強制退去させられる例もみられます。こうした飼い主が自らの努力によって問題を改善することは非常に難しく、周囲のサポートが必要となります。(「ガイドライン」P7)

 

飼い主の精神的・身体的・経済的な問題は、社会福祉にかかる問題であるといえます。実際に関わっていくのは、社会福祉関連の機関や職員ということになります。「ガイドライン」では、それが具体的に示されています。

 

社会福祉制度は、対象者の属性によって種類が分かれています。飼い主の経済的困窮、疾病、障害、社会的孤立等の問題への対応には、福祉事務所、自立相談支援機関、社会福祉協議会、地域包括支援センター、基幹相談支援センター、精神保健福祉センターといった機関や、飼い主の生活に深く根ざしている社会福祉事業者、生活保護のケースワーカー、保健師、精神保健福祉士、社会福祉士、介護支援専門員(ケアマネジャー)、相談支援専門員、民生委員等の関係者の協力が不可欠となります。(「ガイドライン」P24)

 

私の経験では、社会福祉協議会や地域包括支援センター、民生委員からの相談が多い印象があります。

 

何度も言いますが、多頭飼育問題は100%人間の側の問題です。劣悪な環境下で苦しむ動物を生み出さないためにも、飼い主の精神的・身体的・経済的な問題を未然に防ぐ、または初期介入により早期解決につなげることが重要です。飼われている動物の生死を含めたすべてが飼い主に委ねられている以上、飼い主の福祉は動物の福祉につながる重要な問題であり、社会福祉関連の機関や職員の関与はきわめて重要であるといえます。実際に探知や介入、フォローアップなどは社会福祉部局の職員が行うことが多いと考えられますので、日常的に動物愛護管理部局や動物愛護ボランティアとのパイプを築いておくことが求められます。当然のことながら動物愛護管理部局の職員には、多頭飼育問題についての社会福祉部局からの情報提供や相談に的確に応え、的確な指示や指導を行う資質が求められます(私もそのために「ガイドライン」を一生懸命に読んでおります)。