多頭飼育問題の解決に向けて ④周辺の生活環境の改善

周辺の生活環境の改善

動物愛護法第25条第1項ではこう規定されています。

 

都道府県知事は、動物の飼養、保管又は給餌若しくは給水に起因した騒音又は悪臭の発生、動物の毛の飛散、多数の昆虫の発生等によつて周辺の生活環境が損なわれている事態として環境省令で定める事態が生じていると認めるときは、当該事態を生じさせている者に対し、必要な指導又は助言をすることができる。

 

飼い主が指導や助言に従わない場合、勧告や命令も可能です。この業務は、通常各自治体の動物愛護管理部局が行います。また、環境基本法や悪臭防止法、廃棄物処理法などを適用するために、自治体の環境保全部局と連携することもあり得ます。

 

また、多頭飼育問題の解決に向けての周辺の生活環境の改善について、「ガイドライン」にはこう記載されています。

 

多頭飼育問題の対応にあたっては、地域の問題となり得ることを念頭に、家屋の破損箇所の修繕や柵の設置等の逸走(逃げ出し)防止策等、周辺への影響を低減する対策を検討することとなります。(「ガイドライン」P7)

 

簡単に書いていますが、(費用の負担も含めて)それをだれが実施するのかという調整には難航が予想されます。公的な補助制度も必要になるかもしれません。

 

また、多頭飼育問題を引き起こしている飼い主は、しばしば近隣住民との間にトラブルを抱えており、多頭飼育に起因する汚物の堆積、悪臭、騒音、害虫の侵出といった近隣の生活環境への悪影響によって、より一層の社会的孤立を招いてしまい、周囲のサポートが得られにくいという一面もあります。(「ガイドライン」P7)

 

私にも経験がありますが、多頭飼育問題を引き起こすような飼い主は、もともと「変わり者」として地域になじんでいないことが多いのです。そもそも地域住民と良好な関係を築いていれば、問題化する前に周囲のサポートが受けられたはずです。近隣住民からの苦情により飼い主は心を閉ざしてしまい、その一方近隣住民は飼い主との交渉をあきらめ、交渉の一切を自治体に委ねてきます。飼い主の行動を急に変容させるのは容易ではなく、小さな改善を積み重ねていくしかありません。足しげく現場に通いその都度地域の代表者に顔を見せることで、改善に時間がかかることの理解を求め、また地域住民の協力を要請することが求められます。

 

まず、地域の自治会や近隣住民は、多頭飼育問題に起因する悪臭・騒音・害虫等の発生による生活環境の悪化の影響を受けている被害者とも言える存在です。そのため、状況の改善を求めて行政に強い苦情を寄せることが多く、しばしば担当者が飼い主と住民の間で板挟みになることがあります。

そこで、多頭飼育問題への対応前には対応の概要について、また、対応中にあっては、必要に応じて説明可能な範囲で、対応状況や今後の見通しなどについて、情報共有する必要があります。自治会等を通して地域住民や大家に説明するなど、彼らの不安や不信感を取り除くことで、円滑に対応することが可能となります。(「ガイドライン」P79)