わが国における多頭飼育問題の現状

「ガイドライン」には、2020年に全国の自治体を対象に環境省が実施した「令和元年度社会福祉施策と連携した多頭飼育対策推進事業アンケート調査」の結果が記載されています。その内容について簡単にまとめておきます。

 

多頭飼育に係る苦情の状況

平成30年度に「動物を2頭以上飼育している飼い主に関して」「複数の住民から苦情が寄せられた世帯の数」の総数は全国で2,149件で、その約半数の1,095件が「2頭以上10 頭未満」の飼育頭数でした。意外に少ない頭数でも多頭飼育問題は発生しうるということです。飼育していた動物は猫が最も多く、犬がそれに続きます。

 

解決を困難にしている要因・課題等

 

飼い主の問題 「飼い主が生活に困窮しており、引取りや不妊去勢の手数料を支払えない」(85.6%)「飼い主が動物の所有権を手放さない」(82.4%)「飼い主とのコミュニケーションができない」(74.4%)がベスト3です。また「多頭飼育の状況を一時的に改善しても、再発してしまう」(53.6%)というのも大きな問題です。

 

支援のためのリソースの不足 「人員が不足している」(70.4%)「動物を収容する施設・スペースが不足している」(62.4%)というのは、おそらく各自治体が抱えている切実な問題です。

 

他部局・他機関との認識の共有の不足 「福祉部局と、多頭飼育に関する課題認識を共有することが難しい」(56.0%)「飼い主を訪問する福祉サービス提供者まで、多頭飼育の問題について理解されていない」(48.8%)という意見もありました。もちろん福祉部局や機関の職員の中には多頭飼育問題をよく理解されている方もおられますが、個人の資質に頼らざるを得ない現状があります。

 

他部局・他機関との連携体制の未構築 「獣医師会・動物病院・動物愛護団体・ボランティア等の外部機関と十分な連携体制が構築されていない」(43.2%)というのもよく聞く意見です。また「飼い主の個人情報にあたる部分が多く、部局を超えた情報共有が難しい」(38.4%)という問題もあります。

 

行政の問題 「多頭飼育に関する情報が入ってこない」(75.2%)という気持ちはよくわかります。また「殺処分ゼロを目指すために引取りを減らす方針があるため、積極的に介入しづらい」という正直な(?)回答が24.8%あったことに着目すべきです。

私は現場の担当者として、自治体職員に必要な法的権限が与えられていないというのが最大の問題点と考えていますが、アンケートの選択肢にそれはなかったようです。しかし「ガイドライン」の本文でこう触れられています。

 

行政上の課題としては、動物愛護管理法には周辺の生活環境の保全、動物の虐待のおそれの改善のために立入検査等ができる旨が規定されています(第25 条第5項)が、地方自治体が多頭飼育問題の情報を得ても、飼い主の住居(庭等の囲繞地(いにょうち)を含む)に立ち入ることは容易ではありません。そのため、動物の正確な数の把握や飼育状況の確認は困難なことが多いです。また、地方自治体が飼い主に対して動物の所有権を強制的に放棄させることも認められていません。このため自治体職員は、説得を通じて動物の所有権放棄の同意を飼い主から取り付ける必要があります。(「ガイドライン」P15)

 

その他の問題 「飼い主から引取った動物の健康状態や性質に問題があり、譲渡が進まない」(63.2%)という意見は、現場の人間として激しく同意します。

 

※環境省「人、動物、地域に向き合う多頭飼育対策ガイドライン~社会福祉と動物愛護管理の多機関連携に向けて~」P8~15