地域住民等による協力
多くの場合、多頭飼育問題は地域住民等からの苦情申し立てによって探知されます。行政にとって地域住民は、最初は「苦情申し立て者」としての顔を見せます。その一方、地域の事情をよく知る地域住民等は、有力な協力者となる可能性も秘めています。地域住民等は、必然的に多頭飼育問題に深く、しかも長く関わることになりますから、いかに彼らの協力を引き出すかが重要になります。
まず、地域の自治会や近隣住民は、多頭飼育問題に起因する悪臭・騒音・害虫等の発生による生活環境の悪化の影響を受けている被害者とも言える存在です。そのため、状況の改善を求めて行政に強い苦情を寄せることが多く、しばしば担当者が飼い主と住民の間で板挟みになることがあります。
(中略)他方で、地域の自治会や近隣住民は、多頭飼育をしている飼い主の生い立ちや元々の暮らしぶり、家族構成やライフイベントなどを知っている人々でもあります。また、飼い主の孤立を理解し、心配していることもあります。飼い主のセルフ・ネグレクト状態を改善し、社会的孤立を解消するための説得に際し、近隣からの情報や協力が功を奏する可能性もあります。
地域住民等の理解を得ることは、日常生活・日常業務のなかで「いつもと違う」「何かおかしい」と感じたときに、相談、連絡をしてもらうといった地域による緩やかな見守りにつながります。また、動物の譲渡先を探す際に協力が得られる可能性もあります。(「ガイドライン」P39)
専門家による協力と助言
多頭飼育問題への対応にあたっては、社会福祉や動物愛護管理等に関する専門家・研究者等の協力を得ることも重要です。(中略)平時から、地域の専門家について情報収集しておき、必要に応じて協力と助言が得られるように備えておくことが望ましいでしょう。(「ガイドライン」P41)
「ガイドライン」においては、医師等(飼い主の心身のケア)、精神保健福祉士(飼い主の心の問題)、獣医師や獣医師会が専門家として具体的に例示されています。特に自治体が獣医師会と協定を結ぶことは双方にとってメリットがあります(獣医師会は公益社団法人ですからね)。
また、獣医師会の中には、動物の飼育に関する相談窓口の設置等、地方自治体と獣医師会が連携して適正飼養の普及啓発や多頭飼育問題の予防に取り組んでいるところもあります。災害時の対応等のため、あらかじめ協定等を締結しているところもあります。こういった連携体制の構築と、常日頃の情報共有が重要です。(「ガイドライン」P41)