多頭飼育問題への対応① 予防

「ガイドライン」によると、飼い主が飼っている動物の個体数を増加させてしまう要因として「動物の適正な飼育の方法を飼い主が十分理解していないことや、適切な判断ができないこと」をあげています。そのため、多頭飼育問題の予防のためには「動物を適正に飼育してもらうための普及啓発」が重要であるとしています。

普及啓発の対象は地域住民すべて、つまり「ポピュレーションアプローチ」の考え方で行われます。ペットを飼っている人はもちろんですが、そうでない人に対しても普及啓発を行うことにより、適正飼養に対する気風を高めるとともに、周囲の多頭飼育問題を早期発見してもらうきっかけにもなります。

 

周知すべき事項

「ガイドライン」は、地域住民に周知すべき事項として以下をあげています。

 

動物に関する正しい情報

動物の繁殖生態

しつけの大切さ

動物の寿命

習性や生理 など

適切な飼養管理

基本的なケア(給餌・給水、糞尿の始末、温度・湿度の管理、清潔の保持)

健康管理(予防注射等)や獣医療ケア

動物の介護ケア

災害避難 など

動物の飼い主として求められる責任

終生飼養(本当に最後まで飼えるかどうかを考えることを含む)

不妊去勢手術の実施

近隣住民への配慮

もしもの時に飼い主に代わって確実に面倒を見てくれる人を確保する など

多頭飼育の注意点

動物どうしの行き過ぎた闘争(けんか)が起きないようにする

全ての個体に餌がいきわたるようにする

個体ごとの健康状態を把握すること

人とのふれあいや動物同士のふれあいによって社会化する(犬・猫)

適切な飼養管理ができる数を把握し、それ以上飼わないようにする など

飼育に関する相談窓口

飼育で困った時の相談先

早期に相談することの重要性 など

地方自治体の制度・取組

動物の引取り手数料の減免、不妊去勢手術費用の助成制度 など

多頭飼育問題により引き起こされる3つの影響とそのリスク等

 

周知の方法

周知の方法としては、冊子やパンフレットの配布や講習会、学校への出張授業などが行われていますが、パンフレットを手に取る人や講習会を受講するような人はある程度関心のある人であることに注意が必要です。他分野の講習会の配布資料と一緒に配ってもらうなどの工夫が必要です。また広報や回覧など、全住民が閲覧するメディアを使うことも有効です。

 

※ 環境省「人、動物、地域に向き合う多頭飼育対策ガイドライン~社会福祉と動物愛護管理の多機関連携に向けて~」P53