多頭飼育問題への対応⑤ 飼い主の生活支援

「3つの観点」を踏まえた対応方法の最初は「飼い主の生活支援」です。「ガイドライン」は多頭飼育問題を「人の問題」ととらえ、保健福祉分野に関する対応について詳述されているのですが、可能な限り要約してみます。

 

社会福祉の支援につなぐ

支援を受けるためには、飼い主本人、または親族等が支援の必要性を認識し、然るべきところに相談・申請等を行う必要があります。そのため、支援を受けるために必要な相談・申請等を自ら行わせるか、あるいはそれを補助することが必要です。

また飼い主の中には多頭飼育から生じるトラブルにより孤立感や疎外感を抱え、動物を心理的なよりどころにしている人もいることから、こうした飼い主に対しては、飼い主自身とその生活を心配していることを伝え、信頼関係を構築しながら、適切な支援を見極めて生活改善につなげていく必要があります。

 

支援の対象の見極め

飼い主だけでなく、家族の中に支援が必要な人が存在する場合もあることから、飼い主の同居家族等についても状況を把握し、支援が必要なのは飼い主自身か、その家族かを見極めるすることも重要です。

 

信頼関係を築きながら、ゆっくりと

飼い主へのアプローチは、拙速に結果を求めるのではなく信頼関係を構築しながら行うことが必要です。特に飼い主と信頼関係のある親族や近隣住民、社会福祉関係者等のキーパーソンの関与が重要です。

 

状況別の支援体制

 

貧困・生活困窮状態の相談支援

・生活困窮者自立支援制度の活用

・生活保護制度の活用

 

高齢者の介護や生活支援

・介護保険制度(居宅サービス、施設サービス):65 歳以上の高齢者または40~64 歳の特定疾病患者が対象。市区町村による要介護者もしくは要支援者の認定が必要。

・「認知症初期集中支援チーム」や「地域包括支援センター」との連携

 

障害を抱える人々の権利擁護や自立支援

・障害者総合支援法に基づく支援:18 歳以上の障害のある人が対象。

・精神障害のある飼い主については、精神保健福祉士が適切な医療に結びつけていく。

 

児童の安全の確保・子育て支援

18 歳未満の子どもが多頭飼育問題の飼い主であった事例や、飼い主の子どもがネグレクト等を受けていた事例もあるため、児童相談所(都道府県)や子育て世代包括支援センター(市区町村)等との連絡体制を構築しておく必要があります。

 

市町村における地域生活課題の解決に資する包括的な支援体制の整備

・重層的支援体制整備事業:改正社会福祉法に基づく市町村の任意事業。支援対象の属性を特に定めないことが特徴。令和3年4月から。

 

注意事項

・犬の散歩や餌、トイレの世話、飼い主の代わりに動物病院に連れて行くといった動物の世話については介護等の社会福祉的支援の対象外。

・訪問介護事業者が保険外サービスとしてペットの世話を行う場合、第一種動物取扱業の登録が別途必要。

 

※ 環境省「人、動物、地域に向き合う多頭飼育対策ガイドライン~社会福祉と動物愛護管理の多機関連携に向けて~」P64-65