多頭飼育問題への対応⑧ 再発防止

「再発防止」は、多頭飼育問題が解決した後に再び多頭飼育問題が起きないよう、飼い主の自発的な行動変容を促したり、地域等が飼い主を見守る段階です。多頭飼育問題は再発率がきわめて高いため、再発防止のための取り組みは重要です。

 

飼い主の自発的な行動変容を促す

多頭飼育問題の再発を防ぐには、飼い主が多頭飼育の問題点について認識し内省することが最も効果的です。しかしそれは思慮が浅く、なんとなく動物が増えてしまって途方に暮れていたような飼い主なら可能でしょうが、例えば、自分は動物を保護しているつもりのいわゆる「レスキュー型ホーダー」や、多数の動物を抱えることにより周囲の関心や称賛を得ようとしている「搾取型ホーダー」などはやや厄介です。多頭飼育問題が解決したとしても、彼らは自分が問題を引き起こしたという認識が薄く、逆に行政や地域に活動を妨害されたという被害者意識から社会に不満や恨みを抱き、社会からさらに分断されるとともに、動物に対する執着も強まっていくおそれがあります。

残念ながら「ガイドライン」にはそういう飼い主に対する対処について記述されていません。あまりにも闇が深いので、記述を避けたのかもしれません。

 

地域等による見守り

飼い主が動物を心理的な拠り所にしているような場合、このような対処が再発防止に効果的なことがあると「ガイドライン」には記述されています。

 

・不妊去勢手術を施した上で、飼い主が管理できる数の動物を残す

・飼い主が地域社会から孤立しないように地方自治体や近隣住民が配慮する

・飼い主と地域社会の接点となる場や人を維持する

 

地域等による見守りの方法について、「ガイドライン」はセルフ・ネグレクトの見守りの手法が応用できるとしています。

 

緩やかな見守り

・地域住民・民間事業者

・日常生活・日常業務の中で「いつもと違う」「何かおかしい」と感じたら専門の相談機関へ相談、連絡

担当による見守り

・民生・児童委員、老人クラブ、住民ボランティア

・安否確認や声がけが必要な人に担当を決めて定期的に行う

専門的な見守り

・地域包括支援センター、シルバー交番等の専門機関

・認知症・虐待などの対応が困難なケース等に専門的な知識と技術で行う

(「ガイドライン」P70)

 

見守りの限界

飼い主が転居した場合、見守り等のアフターフォローは困難です。「ガイドライン」にはこう記述されています。

 

飼い主が当該地方自治体の管轄地域外に転居した場合、再発防止の観点から、転居先の地方自治体に飼い主の情報を伝達することも必要かもしれません。しかし、転居元の地方自治体の担当部局では飼い主の転居先住所を必ずしも関知し得ないことや、個人情報保護の観点から異なる地方自治体をまたいで個人情報を共有することが極めて困難なことから、現状では行政区分をまたいだ転居の後もアフターフォローを継続することは難しいと考えられます。

転居を重ねながら多頭飼育問題を繰り返す飼い主も存在することから、そうした情報をどのような形で共有し、多頭飼育問題を未然に防止していくのかは今後の課題と言えます。(「ガイドライン」P69)