アニマルホーダーの3つのタイプ

環境省の「ガイドライン」は多頭飼育問題を引き起こす飼い主の傾向についてゆるく触れていますが、はっきりと類型化してはいません。Hoarding of Animals Research Consortium(HARC)のいわゆる”Angell Report”では、アニマルホーダーを大きく3つに類型化しています。つまり「圧倒された飼養者(Overwhelmed caregiver)」「レスキュー型ホーダー(Rescuer hoarder)」「搾取型ホーダー(Exploiter hoarder)」の3つです。この類型化は一見乱暴に見えるかもしれませんが、多頭飼育問題に関わった方であれば、なんとなく納得がいくのではないでしょうか。もちろん、アニマルホーダーのすべてがこの3つに分類されるわけではなく、複数のタイプを併せ持つこともありますし、時期によって遷移することもあり得ます。またHARCは、アニマルホーダーに至る過渡期の状態として「初期ホーダー(Incipient hoarder)」と「ブリーダーホーダー(Breeder-hoarder)」を挙げています。それぞれのタイプを簡単に説明しますと、

 

圧倒された飼養者(Overwhelmed caregiver)

悪気はなく、思慮の浅さや生活上の変化、病気や生活困窮などがきっかけとなり多数の動物を抱え込んでしまっている状態。動物を家族のように大切にしようという意識はあるが、ケアが追い付かない。社会から孤立する傾向がある。

 

レスキュー型ホーダー(Rescuer hoarder)

動物を殺処分から救うという使命感から、後先を考えず積極的に動物を保護してしまいケアが追い付かない状態。にもかかわらず本人はケアは適切であると認識しており、行政等の介入を拒否する傾向がある。イネーブラー(助けるつもりでかえって相手のためにならないことをする人を指す心理学用語)と広範なネットワークを持っている。

 

搾取型ホーダー(Exploiter hoarder)

他者からの関心や称賛などを得るために、積極的に動物を収集する。飼っている動物や近づいてくる人を利用してやろうと考えており、当然ながら動物のケアには無関心。自己中心的なナルシストで、反社会性人格障害との関連が指摘されている。最もタチの悪いホーダーといえる。

 

初期ホーダー(Incipient hoarder)

ネグレクトとまでは言い難いが、動物のケア状況が悪化していて、今後も悪化していく可能性が高い状態。飼い主は改善の意志を持っている。

 

ブリーダーホーダー(Breeder-hoarder)

動物のケアに関して深い知識を持たないまま、販売等の目的で動物の繁殖を始め、次第に適切なケアの維持が難しくなってきている状態。そういう状況にも関わらず繁殖を続けている。動物は飼養施設に放置し、自宅に入れる気はない。

 

"Animal Hoarding:Structuring interdisciplinary responses to help people, animals and communities at risk",Hoarding of Animals Research Consortium (2006),P19-20