TNR手術の手順⑦  個体識別と耳カット

個体識別

鎮静後の猫には個体識別のためのタグを取り付けます。「マニュアル」では識別情報を記載したタグをバンドで胸にくくりつけています。一見じゃまになりそうですが、外し忘れを防ぐためです。

 

In order to ensure that the band is removed when the cat is adequately recovered and returned to the trap, consider placing the band around the cat’s chest to make it more visible. It is extremely difficult to remove an identity band from a community cat who is awake in a trap! 猫が十分に回復して捕獲器に戻されるときにバンドを確実に取り外すために、バンドを猫の胸のあたりに置いて目立ちやすくすることを検討してください。捕獲器の中で目を覚ましているcommunity catからIDバンドを外すのは非常に困難です。

 

猫を識別カードと一緒に移動させるという方法もあります。

 

It may also be helpful for a card that conveys the services requested for each patient to travel with the cat throughout the process at the clinic.

また、患者ごとに要求されるサービスを伝えるカードを、クリニックでのプロセス中、猫と一緒に移動させることも有効です。

 

この場合は、カードと同じ番号を例えば布テープに記入して猫またはケージに張り付けたりします。

 

耳カット

TNRのために野外に戻される猫については、再捕獲や再手術防止の観点から、耳をカットしてそれとわかるようにしなければなりません。耳カットは手術の前か後の、麻酔が効いている状態で行います。日本ではV字カットが行われます(オスは右、メスは左)が、米国では左耳の先端を切り落としているようです。どちらにしても、耳を止血鉗子ではさみ、メスやはさみでその先を切り落とします。その際の注事事項について、「マニュアル」にはこう記載されています。

 

A new, clean hemostat is used for each cat. 

清潔な止血鉗子は、猫ごとに新しいものを使用する。

Use a sterile blade to cut off the tip of the ear that is exposed above the hemostat. 

滅菌した刃を使って、止血鉗子の上に露出している耳の先端を切り落とす。

Use a new sterile blade for each cat. 

猫ごとに新しい滅菌刃を使用する。

A silver nitrate stick or small amount of styptic powder is applied to the cut edge of the pinna to control bleeding. 

出血を抑えるために、硝酸銀スティックまたは少量の止血剤を切り口に塗布する。

(補足)硝酸銀は傷口を「焼いて」出血を抑えます。

The hemostat may be left on the pinna to apply pressure through surgery and recovery and be removed just before returning the cat to the trap.

止血鉗子は手術と回復の間、圧迫するために残しておき、猫を捕獲器に戻す直前に取り外す。

 

米国では避妊去勢手術済みの証として猫の腹部にタトゥーを入れたりするのですが、日本では一般的ではないので割愛します。

 

※ ASPCA”Special Considerations for Community Cats at Spay/Neuter Clinics Best Practices for Medical and Management Protocols”p8-9