野良猫にとっては、スペイクリニックが唯一獣医療を受けられる場になる可能性があります。特に感染症制御の観点から、麻酔からの回復期に追加の獣医療サービスを提供する場合があります。クリニックの考え方にもよりますが、「マニュアル」では以下のようなサービスを想定しています。
●Vaccinations (rabies, FVRCP)(ワクチン接種)
米国は狂犬病常在国のため、野良猫にも狂犬病ワクチンの接種を行います。日本ではFVRCP(猫ウイルス性鼻気管炎、猫カリシウイルス感染症、猫汎白血球減少症)の混合ワクチンのみ接種するのが一般的です。本来ワクチンは2回接種が望ましいのですが、野良猫への再接種は難しいため、1回だけでも接種しないよりはましという考え方です。
●Flea control (topical products are preferred)(ノミの駆除)
公衆衛生上の観点からも、ノミの駆除は重要です。回復期に外用薬を塗布します。
●Ear cleaning and treatment of ear mites (single application ear mite treatments are preferred)(耳掃除と耳ダニの治療)
耳ダニ駆除は、1回塗布で効果がある製品を選びます。
●Deworming (top spot products are preferred)(駆虫)
駆虫薬を飲ませるのはなかなか難しいので、回復期にスポットオンタイプの駆虫薬を塗布します。
●Microchip(マイクロチップ)
マイクロチップによる管理が必要な場合は、麻酔が効いている間の方が楽に挿入できます。
●FeLV/FIV testing:(レトロウイルス検査)
野良猫のFeLVやFIVの検査についての考え方について、「マニュアル」にはこう書かれています。
Retroviral testing is generally not recommended for community cats. A good resource for assisting in making the decision to offer testing or not is To Test or Not to Test: Is Testing for FeLV and FIV in Feral Cats Always Necessary? from Alley Cat Allies.
レトロウイルス検査は一般的にcommunity catには推奨されません。検査をするかしないかの判断を助けるための良い資料として、Alley Cat Alliesの"To Test or Not to Test: Is Testing for FeLV and FIV in Feral Cats Always Necessary? "があります。
しかしながら、レトロウイルス検査が推奨されない理由は経費や人役といったリソースの問題ですので、検査してはならないというわけではありません。リソースが許せば検査してもよいと私は思います。
※ ASPCA”Special Considerations for Community Cats at Spay/Neuter Clinics Best Practices for Medical and Management Protocols”p12-13