MASHタイプのスペイクリニックの開設届について

最近、主に猫の避妊去勢手術を比較的低価格で専門的に行う、いわゆるスペイクリニックが全国で増えつつあります。当然のことながら、スペイクリニックも獣医療法でいうところの「飼育動物診療施設」に該当しますので、開設から10日以内に管轄の家畜保健衛生所への届出が必要です。意外に思われるかもしれませんが、「許可」ではなく事後の「届出」なのです。届出後に一応担当職員が現地を見に来ますが、それで却下になったりはしないようです(指導が入ることはありますが)。

そこで問題になるのが、MASHタイプのスペイクリニックの届出です。MASHとはMobile Animal Surgical Hospitalの略で、地元の施設を一時的に借り、手術に必要な機材や資材一式を持ち込み仮設の手術室を設け、避妊去勢手術を行うタイプのスペイクリニックです※。MASHは1日限り、または長くても数日だけ開設することが多いので、事後の届出ということになれば、例えば土日だけの実施であれば月曜日に届出た時点にはすでに終わっていたりします。

獣医療法第2条第2項では「この法律において「診療施設」とは、獣医師が飼育動物の診療の業務を行う施設をいう。」と規定されています。一般的に「業務」の定義は「反復継続の意思を持ち、社会性を有する活動」とされていますので、その定義によれば、1日限りのMASHを単発で行う際には届出は不要と考えられます。2日以上の開催であれば「反復継続の意思あり」とみなされ、届出が必要と考えられます。

ただし届出についての取扱いは都道府県によって異なっていて、1日限りのMASHであっても事前の届出を求められる自治体もあります。ですので、MASHを実施する際には管轄の家畜保健衛生所にあらかじめ相談しておくことをお勧めします。その際には以下の書類を用意しておくと話がスムーズに進むと思います。

 

・会場の見取図(手術台などの配置図)

・会場の地図

・獣医師免許証の写し(執刀医だけではなくサポート獣医師も含む)

・会場の使用契約書、使用許諾書等

 

特に地方においては、需要が多いにもかかわらずスペイクリニックの普及が遅れている地域があることも事実です。実際にMASHを運営しようとすれば、執刀医の招へいもさながら、衛生面が担保でき、かつ水や電気が使えるような会場を確保することはなかなか大変ですが、もし条件が整うのであればやってみる価値はあると思います。

 

※MASHは仮設の手術室を設営する形態で、自動車やトレーラー内に手術室を作り、移動しながら避妊去勢手術を行うMSNC(Mobile Spay-Neuter Clinic)とは区別されます。