子猫の安楽殺について考える その3

静脈注射が困難な幼齢子猫の安楽殺法について、環境省の「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準の解説」でマウスやラットの安楽殺法として提示されている方法を検討していきます。

 

【推奨順位 第1位】ペントバルビタールなどの腹腔内・胸腔内への過量投与

ペントバルビタール以外のバルビツレート(チオペンタール、チラミナール)も安楽殺に使用することは理論上可能とされていますが、そもそもペントバルビタールほどの効果があるか否かは未知数です(現場で試すわけにはいきませんから)。

赤木ら(2020)はラットの安楽殺において、セコバルビタールがペントバルビタールと同等に使用できる(腹腔内投与も可能)と報告しています※。セコバルビタールは国産(「アイオナール」日医工)ですので、入手に関する懸念はありません(メーカー都合により一時的に供給が止まったことはありますが)。

非医薬品のペントバルビタールを入手し調製して使用するという手もあります。米国の動物実験機関には経費削減のため非医薬品のペントバルビタールを用いているところもあるそうです。非医薬品を用いるのですから、それを用いる必然性についてきちんと説明できることは前提となります。

 

【推奨順位 第2位】塩化カリウムの心臓内投与

米国におけるペントバルビタール供給不足を受け、その代替法としてASV(シェルター獣医師会)が推奨している方法です。麻酔下において、塩化カリウムを静脈内または心腔内に注入します。塩化カリウムには鎮痛作用や麻酔作用がないため、単独使用は認められません。

 

【推奨順位 第3位】イソフルラン・セボフルランなどの吸入麻酔薬あるいは二酸化炭素

 

吸入麻酔薬については、AVMA(米国獣医師会)などの海外のガイドラインにおいて、幼齢動物の場合は時間はかかるものの、安楽殺法として認められないとの記述は見当たりませんでした。しかし幼齢動物は呼吸機能が未発達であり、可能であれば他の方法のほうがよいのではないかと私は考えています。

二酸化炭素は理論上安楽殺が可能とされている方法ですが、環境省の「解説」においても「しかし、CO2濃度の推移と動物の生理学的変化と死亡までの過程について動物福祉の観点から多くの議論があり、完全な結論は得られていない。」と記されていますし、AVMAのガイドラインにおいても積極的に推奨されていないことから、可能であれば他の方法をとるべきであると私は考えます。

 

※1 赤木ら(2020)「安楽死処置におけるセコバルビタールの有用性」、(公社)日本実験動物協会情報誌「LABIO21」特別掲載http://www.nichidokyo.or.jp/labio21.html