「引取り拒否」+「譲渡促進」=「殺処分ゼロ」?

日本の環境省は、自治体が犬猫の引取りを拒否して譲渡を増やせば殺処分は減らせると考えています。実際にここ10年ほどで殺処分数は劇的に減少しています。しかしそれは関東地方や中国地方の、かつて殺処分数が多かった自治体が「団体譲渡」というカラクリで見た目の殺処分数を減らしているからほかになりません。そして「団体譲渡」された犬猫がどうなったかはよくわかりません。西日本の某県から「団体譲渡」された犬が団体間を渡り歩き、京都の「神様」宅にたどり着いたという事例も確認されています。

 

さらに、引取りを拒否された犬や猫(主に猫ですが)がその後どうなっているのかも定かではありません。最悪の場合、野に放たれたまま繁殖を繰り返しているかもしれません。「殺処分ゼロ」などと余計なプレッシャーをかけるから、国や自治体は姑息な手段で「殺処分数」を減らそうとするのです。しかし偽りの「殺処分ゼロ」はハッピーエンドではなく、悪夢の始まりであるということに、誰も気づきません。いや、気づかないふりをしているだけなのかもしれません。「引取り拒否」+「譲渡促進」=「殺処分ゼロ」という方程式は、キレイ事だけをならべた机上の空論なのです。

 

インチキなしの、本当の「殺処分ゼロ」を実現するためには、犬猫の避妊去勢手術や地域猫活動など、収容の必要がある犬猫を減らすための「入口対策」を徹底するほかありません。

 

感情が入らないように、たとえ話で説明します。蛇口から水が勢いよく浴槽に流れ込んでいます。水が今にも浴槽からあふれ出しそうになっています。あなたならどうしますか?ほとんどの人が「蛇口を閉める」と答えるでしょう。しかしそうではないのが日本の動物愛護行政なのです。

 

浴槽から水があふれ出してしまったら「水がもったいない」と怒られてしまうので、あふれ出さないよう必死にバケツで水を汲み出し周りに並べていきます。もちろん蛇口からは水が出たままです。汲み出した水は洗濯や植物の水やりに使いますが、すべて使いきれるものではありません。見かねた人が隣に新しい浴槽を置いてくれました。汲み出した水を新しい浴槽に移していきます。こうして、見た目は水があふれていない状態が演出されていきます。

 

しかしバケツで水を汲み出し周りに並べていくと、そのうちバケツも足りなくなります。バケツが足りなくなったら、ホームセンターに買い出しに行きます。そのうちバケツの在庫も尽き、バケツを置く場所もなくなるでしょう。隣の浴槽もいずれあふれてしまうでしょう。それでも蛇口からは水が出続けます。まさに自転車操業が続くわけです。

 

蛇口を閉めることなく、浴槽から水があふれて浴室が水浸しになるのを防ぐもう一つの方法は、蛇口にホースをつないで水を屋外に逃すことです。これだと浴槽は水浸しにはなりませんが、目に見えない形で水が垂れ流されていることに変わりはありません。蛇口を閉めなければ、問題は永遠に解決しないのです。