本当の「殺処分ゼロ」を実現するためには、動物管理機関に入る動物の数を減らしつつ、譲渡や返還による「ライブリリース」を増やしていくしか方法はありません。そして動物たちは動物管理機関に収容されている間、「5つの自由」に基づく人道的扱いが保証されなければなりません。シェルターメディスンはまさにそれを実行するための獣医療なのです。
シェルターメディスン発祥の地である米国では、殺処分の削減と動物福祉を両立させるための具体的なプロジェクトが始まっています。そのひとつがMillion Cat Challengeです。
Million Cat Challengeとは何か
Million Cat Challengeを一言で説明すると、このキャンペーンに賛同するアニマルシェルターが「5つの取り組み」を実行し、シェルターに収容される猫の数をコントロールすることにより、5年間で100万匹の猫の命を救おうとするプロジェクトです。このプロジェクトは2014年から始まりましたが、4年間で目標を達成し、現在は #allthecatsという次のフェーズに入っています。ですので、本当は #allthecatsと呼ばなければならないのでしょうが、公式ホームページのタイトルもMillion Cat Challengeのままなので、ここではMillion Cat Challengeと呼ぶことにします。
Million Cat Challengeの実施主体
Million Cat ChallengeはUC Davis Koret Shelter Medicine ProgramとMaddie’s Shelter Medicine Program at the University of Floridaの共同プロジェクトとして、Maddie's Fundの支援を受けながら、Kate Hurley博士とJulie Levy博士の主導により実施されています。
Million Cat Challengeが目指すもの
Million Cat Challenge（#allthecats）が何を目指しているのか、公式ホームページにはこう書かれています。
#allthecats means finding the right outcome for every cat who comes to a shelter, even if that “outcome” is never being admitted at all. It means building the community safety net so that many cats and kittens can get the care they need right where they are. It means providing sufficient space and humane care in the shelter so the cats that do come can be moved quickly and safely to the best possible result: Lost cats go back to their families, cats who have lost their homes are placed in new ones, and cats who are thriving in the community are spayed or neutered and returned to their outdoor home if possible, or placed in a working home if not. And it means that for cats whose suffering can’t be remedied any other way, euthanasia will be available with the most kindness and comfort that can possibly be provided.
#allthecatsとは、その「結果」が「一切収容しない」というものであったとしても、シェルターにやってくるすべての猫に適切な結果をもたらすことです。それは、多くの猫や子猫が必要なケアをどこにいても受けられるように、地域のセーフティネットを構築することです。それは、シェルターに十分なスペースと人道的なケアを提供することを意味し、来た猫たちを迅速かつ安全に移動させ、最良の結果を得られるようにすることにつながります。迷子になった猫は家族のもとに戻り、家を失った猫は新しい家に移され、地域で生活している猫は避妊去勢手術を受け、可能であれば屋外のすみかに戻り、そうでなければ収容施設に移されます。そして、他の方法では苦しみを改善できない猫には、可能な限りの優しさと快適さをもって安楽殺を提供するということです。
※ https://www.millioncatchallenge.org/millioncatchallenge