Million Cat Challenge(#allthecats)は、アニマルシェルターの「5つの取り組み」の4つ目として「譲渡の障壁の除去(Removing Barriers to Adoption)」(https://www.millioncatchallenge.org/resources/removing-barriers-to-adoption)をあげています。
シェルターが猫を譲渡する際の大きな問題点として、次の3つがあげられます。
シェルターから猫を譲り受ける人が限られている
猫が飼いたい場合、多くの場合は知人から譲り受けたり、野良猫を拾ったりします。シェルターから譲渡を受ける人は1/4以下であるという報告もあります。
譲渡の手続きが煩雑で敬遠される
シェルターから猫を譲り受ける際には、しばしば面談や自宅訪問といった審査や契約が必要となります。かつて米国では審査が厳しすぎて、動物福祉の専門家が審査に落ちるなどという「珍事」が問題になったことがあります。
シェルターへのアクセスが不便
多くのアニマルシェルターは、近所迷惑にならないような交通の不便な場所に位置しています。たとえ交通至便な場所にあったとしても、シェルターの多くは自治体や非営利団体が運営しているため、休日や夜間の譲渡に対応していないことも多いのです。
これらの問題が起こる背景として、譲り受け希望者にとって「便利な」譲渡は「安直な」譲渡につながり、遺棄や不適切飼養の温床になるという、動物保護団体の伝統的価値観があります。Million Cat Challengeはこういった譲渡のあり方を「根拠のないアプローチ(Unfounded approaches)」と断じています。もちろんそれは印象や理念の問題ではなく、シェルターメディスン研究のエビデンスに基づいています。
そして「開かれた」譲渡(Open adoptions)により、譲渡の門戸を広げるべきとしています。「開かれた」譲渡とは、厳しい審査に合格した人に譲渡するというのではなく、面談やふれあいなどによって、対象となる動物にとってふさわしい飼い主を探し譲渡するという「マッチング」の考え方に基づく譲渡のことです。もちろん、マッチングが失敗する可能性もありますから、万全なフォローアップを行ったうえで、必要に応じて再譲渡のサポートやシェルターへの返還体制も検討しなければなりません。
また、譲渡の利便性を高める工夫も必要です。Million Cat Challengeはその具体策として「無料または廉価での猫の譲渡(Fee-waived and discounted cat adoptions)」や「休日譲渡(Holiday adoptions)」をあげていますが、ペットショップやホームセンターでの譲渡や、休日に大規模な譲渡会を開催するといった工夫も必要です。コロナ禍の中、米国ではオンライン譲渡会が活発に行われていて、日本でも試みられていますが、これも譲渡の利便性を高めるひとつの方法かもしれません。