Million Cat Challenge(21) 「譲渡の障壁の除去」その6

Million Cat Challenge(#allthecats)は、「開かれた」譲渡(Open adoptions)から一歩進んだ「戦略的」譲渡を提唱しています(https://www.millioncatchallenge.org/resources/removing-barriers-to-adoption)。

 

「戦略的」譲渡とは

「戦略的」譲渡について、Million Cat Challengeはこう述べています。

 

Strategic adoptions go even a step beyond open adoptions by targeting placement of behaviorally sound, sterilized, vaccinated, identified animals in homes in the very same neighborhoods that are the source of most shelter intake. This serves the multiple purposes of building a bridge between the shelter and people in these higher risk communities (much like Pets for Life and other targeted programs), stabilizing pet populations by placing sterilized animals into homes, and finding adoptive homes for shelter pets that might otherwise languish in a cage or face euthanasia.

「戦略的」譲渡は、「開かれた」譲渡よりもさらに一歩進んで、行動的に健全で、避妊去勢手術を受け、ワクチンを接種し、個体識別された動物を、シェルターへの受け入れ数が多い地域の家庭に託すことを目的としています。これにより、シェルターとリスクの高い地域の人々との橋渡しをしたり(「Pets for Life」や他のターゲットを絞ったプログラムと同様)、避妊去勢手術を受けた動物を家庭に入れることでペットの個体数を安定させたり、ケージの中で眠っていたり安楽死を余儀なくされたりする可能性のある保護動物に譲渡先を見つけたりするなど、複数の目的を果たすことができます。

 

「戦略的」譲渡のメリット

ここでいう「戦略的」譲渡は、実を言うと日本でも一部の自治体で行われています。行動上の譲渡適性があり、避妊去勢手術やワクチン接種、マイクロチップ埋設を施した動物を、当該自治体の住民に限って譲渡するわけです。その狙いは次のとおりです。

 

納税者への還元 自治体が実施する譲渡事業は、その自治体の予算によって運営されています。譲渡先を自治体内に限ることで、住民の事業に対する理解を得やすくなります。

 

フォローアップの容易さ 遠方に譲渡すると、フォローアップが困難な場合があります。譲渡先を自治体内に限れば、細やかなフォローアップが可能です。

 

優良な飼い主・健全なペットの普及 譲渡の際に譲渡講習会の受講を義務付けるなどの施策により、自治体内における優良な飼い主の割合を増やしていく効果が期待できます。また、避妊去勢手術済みの動物を譲渡することにより動物の繁殖が抑えられ、受け入れるべき動物の数を結果的に減らすことにもつながります。