繁殖とホルモン<オスの場合>

犬猫の避妊法を理解するためには、専門家レベルの知識は必要ありませんが、最低限の流れを理解しておくことが必要です。ふだん一般の方に説明しているように、できるだけ単純に説明したいと思いますが、難しかったらごめんなさい。

 

繁殖とホルモンの基礎

ここで登場する臓器と、それぞれが分泌するホルモンについて、あらかじめ名前をあげておきます。

 

視床下部 視床下部は脳の一部で、摂食中枢や繁殖行動中枢など生きていくのに必要な様々な中枢が存在します。下垂体にホルモンを分泌させるために指示を出すホルモンを分泌する部位でもあり、GnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)はそのひとつです。

 

下垂体 下垂体は視床下部の下にぶら下がっているホルモン分泌器官で、視床下部からの指示によって様々なホルモンを分泌します。GnRHの指示によって分泌される「性腺刺激ホルモン」はそのひとつで、FSH(卵胞刺激ホルモン)LH(黄体形成ホルモン)の2種類があります(FSHやLHはオスも分泌します)。

 

精巣 精巣はLHの作用により、アンドロジェン※を分泌します。

 

卵巣 卵巣にFSHやLHが作用すると、卵胞の成長や黄体の形成が促され、卵胞からはエストロジェン(卵胞ホルモン)、黄体からはプロジェステロン(黄体ホルモン)が分泌されます。

 

オスの場合

繁殖におけるホルモンの働きについて、まず簡単なオスについて説明します。メスとは異なり、オスはその気になりさえすれば年中繁殖が可能です。しかしオスがその気になるには、発情したメスの匂いや鳴き声などの刺激が必要です。こういった刺激を受けると、視床下部からGnRHが分泌され、下垂体に到達するとそこからFSHとLHが分泌されます。

 

これらのホルモンが精巣に到達すると、精巣を活性化させて発情の準備をします。具体的にいうとFSHは「セルトリ細胞」に作用して精子の生成を促進し、LHは「ライディッヒ細胞」に作用してアンドロジェンを分泌させます。

 

アンドロジェンはFSHと協働するとともに、視床下部に働きLHの分泌を抑制します。これは「負のフィードバック」という現象で、ホルモンの量が十分であるというメッセージが上流の器官に伝わることによって起こります。

 

またアンドロジェンが視床下部の別の部分にある繁殖行動中枢に作用することによって、発情行動が起こります。メスはもう少し複雑なのですが、どちらにしても、精巣や卵巣が分泌するホルモンが繁殖行動中枢に作用することによって発情行動が起こります。精巣や卵巣を摘出すると発情行動が起こらないというのはこういうことなのです。

 

※精巣などから分泌されるいわゆる「男性ホルモン」のことをざっくりと「アンドロジェン」(アンドロゲン)と呼びます。「テストステロン」はその一種です。