繁殖におけるホルモンの働きについてですが、メスの場合は少々複雑です。本当はもっと複雑なのですが、できるだけ簡単に説明します。
メスの場合
(1) GnRHの分泌→FSH・LHの分泌
視床下部がGnRHを分泌するスイッチには、じわじわと分泌させる「パルス」スイッチと、一気に放出させる「サージ」スイッチがあります。それぞれのスイッチは作動条件が異なり、「サージ」スイッチは特定の条件でのみ作動します。何らかの刺激により視床下部の「パルス」スイッチが作動してGnRHが分泌されると、FSHやLHがじわじわと分泌されます。
(2) 卵胞の成長→エストロジェンの分泌
FSHやLHが卵巣に到達すると、卵胞(卵子が入っている袋)を刺激し成長させます。卵胞は卵巣の中に多数存在し、ホルモンの刺激により複数の卵胞が成長します。
成長した卵胞からはエストロジェン(以下E)が分泌されます。Eは視床下部の「パルス」スイッチを抑制し(負のフィードバック)GnRHの分泌を抑制します。このことにより、結果的にFSHの分泌量が減り、多くの卵胞は退行(しぼんでしまう)し、一部の卵胞が選抜されます。
(3) エストロジェンの大量分泌→発情および排卵
選抜された卵胞からは、大量のEが分泌されます。大量のEは、視床下部の繁殖行動中枢に作用して繁殖行動を起こさせます。
そして大量のEは視床下部の「サージ」スイッチを作動させ、GnRHを一気に放出させます(正のフィードバック)。それを受けてFSHやLHも一気に放出され、大量のLHが成長した卵胞に作用して排卵を起こします(LHサージ)。そしてその跡地に黄体を形成します。
ただし猫の場合は少し異なり、交尾による膣の刺激が視床下部の「サージ」スイッチを作動させ、LHサージを起こし排卵します。
(4) 黄体の形成→プロジェステロンの分泌
排卵によって形成された黄体はプロジェステロン(以下P)を分泌します。Pは視床下部の「パルス」スイッチを抑制し(負のフィードバック)、GnRHの分泌を抑制することで卵胞の成長を抑制します(つまり発情や排卵を阻止します)。卵子が受精し着床すると、そこで形成された仮設の臓器である胎盤からホルモンが分泌され、このホルモンが黄体を維持させ、Pが分泌され続けることにより妊娠を維持させます。受精しなければ胎盤が形成されないため、黄体は退行していきます。
これが発情の一連の流れです。犬の場合は、年に1~2回の繁殖期の間に1回ずつ発情が起こります(単発情)。猫の場合は、繁殖期の期間中何回かこのサイクルを繰り返します(多発情)。