動物の避妊法<雄性避妊>

動物の避妊法について、分類のしかたがいくつかあります。

 

(1) オスの避妊(雄性避妊)かメスの避妊(雌性避妊)か

(2) 非可逆的(元に戻せない)か可逆的(元に戻すことができる)か

(3) 避妊の方法(サイクルのどの部分を阻止するか)

 

具体的にどのような避妊法が存在、または検討されているのか、少し古い文献で恐縮ですが(この分野は日々進歩しています)、まずは概要をつかむため、繁殖学の教科書である「獣医繁殖学」(文永堂出版、森純一、1995)を参照しまとめてみました。

 

雄性避妊

オスに何らかの処置を施し避妊するには、①精子を作らせなくする ②精子が外に出ないようにする ③交尾できないようにする といった方法が考えられます。

 

精子を作れなくする

去勢 精巣の外科的除去です。好ましくない繁殖行動を抑制することもできるため、犬猫で広く用いられています。

化学的去勢 クロルヘキシジンや塩化カルシウムといった薬物を精巣に直接注射し萎縮させるという方法が、海外では研究されています。また、精巣に毒性を持つαクロロヒドリンを皮下注射する方法もかつて検討されていたそうです。

LHの投与 教科書的には、LH(黄体形成ホルモン)をオス犬に投与することにより抗LH抗体を生成させ、精子生成を阻害することができるそうです。

 

精子が放出されないようにする

精巣を温存したまま、精管切除または結紮、または化学薬品により精管を「焼いて」しまうことによって精子が放出されることを防ぐ方法です。犬や猫の場合は精巣を温存するメリットがほとんどないため一般的ではありませんが、人間の場合「パイプカット」は一般的に行われています。また発情発見(試情)用の産業動物(メスが発情しているかどうかを判定するための、いわゆる「当て馬」)には「接して漏らさず」が求められるため、こういった処置が行われることがあります。

 

交尾の阻止

犬や猫には用いられませんが、産業動物の試情用オスには

陰茎にエプロンや布をかぶせる/陰茎を切断する/陰茎が突出しないよう奥で固定する/陰茎を曲げて固定する/包皮を縫い付け閉鎖する/陰茎に血栓を作り勃起を阻止する

といった方法を用いて物理的に交尾不能にすることが行われているようです(一部、非常に恐ろしげな方法もありますが)。