現在利用可能な犬猫の避妊法

犬猫の避妊法について、理論上可能なものや過去に検討されたものを含めてご紹介しましたが、現時点で臨床応用されている犬や猫の避妊法は次のとおりです。

 

外科的な方法

 

去勢(オス)

精巣を摘出する方法。精管切除などの外科的方法もありますが一般的ではありません。

 

卵巣割去または卵巣子宮全摘出(メス)

卵巣を摘出する方法。卵管結紮や子宮摘出などの外科的方法もありますが一般的ではありません。

 

非外科的な方法(ACC&Dによる※)

 

少なくとも1つの国や地域において承認されているもの

 

プロジェスチン(メス)

化学合成されたプロジェステロン類似物質を総称してプロジェスチンと呼び、いくつかの薬剤が臨床応用され、主要先進国で承認されています。

 

・酢酸メゲストロール(MAまたはMGA; Megecat®、Ovaban®)

・メドロキシプロゲステロン酢酸エステル(MPA; Provera®、Depo-Provera®)

・プロリゲストン(Covinan®、Delvosteron®)

 

※プロリゲストンは日本でもコビナン®(MSDアニマルヘルス)、デルボステロン®(共立製薬)という商品名で犬の発情抑制剤として承認されています。

 

※日本ではクロルマジノン酢酸エステル(ジース®インプラント:あすかアニマルヘルス)がメス犬用発情抑制剤として承認されています。

 

GnRH作動薬(オス犬)

インプラントによりGnRH類似物質をじわじわと投与することにより、下垂体のGnRH感受性を低下させ(ダウンレギュレーション)、下垂体からの性腺刺激ホルモンの分泌を抑制します。オーストラリア、EU、中国等でオス犬にのみ承認されていますが、作用機序から考えると猫やメス犬にも有効なはずです。薬剤名は酢酸デスロレリン(Suprelorin®)です。

 

少なくとも1つの国や地域で承認されているが、入手困難なもの

 

グルコン酸亜鉛(オス犬)

精巣に直接注射することで精子の生産を抑制します。米国食品医薬品局(FDA)の承認を受け、Zeuterin™またはEsterilSol™という商品名で販売されていましたが、メーカー都合により製造が中止され、再販の見込みはありません。

 

未承認だが研究のため現場で用いられているもの

 

塩化カルシウム(オス)

犬や猫の精巣に塩化カルシウムを注射することで精子の生産を抑制する試みが、米国、イタリア、インドで行われていますが、規制当局により承認されていないため、ACC&Dは「監視条件下で試験的に」投与することとしています。

 

※ Alliance for Contraception in Cats & Dogs  https://www.acc-d.org/products