外科的去勢（surgical castration）とは
外科的去勢の手順について、Alliance for Contraception in Cats & Dogs （猫と犬の避妊のための同盟：ACC&D）のレポート"Contraception and Fertility Control in Dogs and Cats"(2013)にはこう記述されています。
Male dogs and cats are castrated under general anesthesia. Incisions or an incision is made in the scrotum (pre-scrotal incisions are most common in the US in dogs) and each testicle is exteriorized, the blood supply and spermatic cord are ligated, and the incision is closed in dogs or (commonly) left open in cats. Typically the procedure is completed quickly and risk of infection is low.
オスの犬や猫は全身麻酔下で去勢されます。陰嚢の1か所または2か所を切開し（米国では犬の場合、陰嚢前切開が最も一般的です）、各精巣を露出させ、血管と精管を結紮し、犬の場合は切開を閉じ、猫の場合は（一般的に）開いたままにします。通常、手順は迅速に完了し、感染のリスクは低くなります。(p22)
犬や猫では通常、精管切除術は用いられません。
One alternative to surgical castration in males is a vasectomy; however, this procedure is not widely performed in part because it does not affect undesirable aggressive behavior (University of California, Davis (UCD) 2012).
オスの外科的去勢の代替法のひとつが精管切除術です。しかしこの方法は、望ましくない攻撃的な行動に影響を与えないこともあり、広く行われていません(University of California, Davis (UCD) 2012)。
★のらぬこの補足★
特に猫にはさまざまな去勢法があり、執刀医の好みもあるので一般論だけ述べておきます。陰嚢を切開すると、白い膜（鞘膜）につつまれた精巣が露出します。去勢の際にこの膜を切開せずにまるごと精巣を取り出すのが「閉鎖法」、鞘膜を切り開いて精巣だけを取り出すのが「開放法」です。閉鎖法の方が手順は単純ですが、血管や精管の結紮がほどけやすいので、しっかりとした結紮が可能な開放法を好む獣医師が多いようです。
開放法の場合、取り出した精巣につながっている膜を分離して、精巣が血管と精管だけでつながっている状態にします。犬や大きな猫の場合、結紮糸を用いて血管と精管をまとめて結紮し切断しますが、猫の場合は血管と精管をまとめて結んでしまう（自己結紮）こともよく行われています。
犬の場合、切開した陰嚢の皮下を縫合しますが、猫の場合、通常陰嚢は縫合しません。特に猫の去勢の場合、手術の合併症のリスクはほとんどないといわれています。