犬猫用プロジェスチンの歴史 その3

犬や猫の避妊薬の歴史について、Alliance for Contraception in Cats & Dogs (猫と犬の避妊のための同盟:ACC&D)のレポート"Contraception and Fertility Control in Dogs and Cats"(2013)の記述から見ています。

 

酢酸メゲストロール

Megestrol acetate (MGA) was another early progestin that was marketed for use in dogs in Europe, the US, and Canada, beginning in the early 1970s. This product is an oral tablet that has been the only product approved for use in the breeding bitch in the US. Marketed as Ovaban®, there were two protocols approved for use in the dog. One was at a higher dose and short duration to stop a cycle once begun. The other protocol was at a lower dose and longer duration to prevent the cycle from occurring. Although the marketing of  MGA as a specific veterinary product has been discontinued, MGA is available as a generic for human use but used only on a limited basis in the US.

 

酢酸メゲストロール(MGA)は、1970年代初頭から、ヨーロッパ、米国、およびカナダで犬用に販売されたもう1つの初期のプロジェスチンでした。この製品は、米国で繁殖メス犬での使用が承認されている唯一の経口錠剤です。Ovaban®として販売されており、犬では2つの投薬法が承認されていました。ひとつは発情を停止するための高用量・短期間の処方、もうひとつは発情を予防するための、低用量・長期間の処方でした。動物用医薬品としてのMGAの販売は中止されましたが、MGAは人用薬の一般名として入手可能です。しかし、米国では限定的にしか使用されていません。(p13-14)

 

★のらぬこの補足★

MGAは米国においてメス犬用の避妊薬としてFDAによって承認され、Ovaban®(欧州ではOvarid®)という商品名で販売されていましたが、現在は販売されていません(承認が取り消されたわけではない)。しかし各国の承認を受けていない「動物用」MGAがインターネット上で出まわっていますし、獣医師が自らの責任において処方するのであれば、人間用のMGAを流用することも可能です(成分は同じですから)。つまり微妙ながらもMGAは「使用可能」な薬剤なのです。

ちなみに日本においては、MGAは医薬品としても動物用医薬品としても未承認ですので、個人輸入で入手するしかありません。獣医師が国内未承認の医薬品(人間用を含む)を個人輸入して自ら動物に処方することは合法ですが、販売や譲渡しはできません。このことは特に野良猫の繁殖制限を目的にMGAを投与しようとする際に問題になってきますが、ここでは深く触れないことにします。

酢酸メゲストロール