野良猫への酢酸メゲストロールの使用 その1

酢酸メゲストロールが猫の経口避妊薬として効果があるとすれば、それを野良猫の繁殖抑制に使用できるのではないかと考えるのは自然な発想です。かつてそれを謳った製品が販売されていました。Alliance for Contraception in Cats & Dogs (猫と犬の避妊のための同盟:ACC&D)のレポート"Contraception and Fertility Control in Dogs and Cats"(2013)にはこう記述されています。

 

An unapproved product, FeralStat® (megestrol acetate), was marketed over the Internet in the US for contraception in feral cats from 2009-2011. The product was produced by a compounding pharmacy to be added canned cat food and fed to cats for fertility suppression. The distributor characterized FeralStat as a “stop gap” measure to prevent reproduction until a colony could be trapped and sterilized. The dose of megestrol acetate that was contained in FeralStat was significantly lower than that used historically; its safety and effectiveness do not appear to have been studied (ACC&D 2010).

 

未承認の製品であるFeralStat®(酢酸メゲストロール)は、2009年から2011年にかけて、野良猫の避妊のために米国でインターネット上で販売されました。この製品は、調剤薬局によって製造され、猫缶に添加し、出産を抑制するために猫に与えられました。販売業者はFeralStatを、コロニーが捕獲されて避妊去勢されるまでの繁殖を防ぐための「つなぎ」として位置づけました。FeralStatに含まれていた酢酸メゲストロールの投与量は、これまで使用されていた投与量よりも大幅に少なく、その安全性と有効性は検証されていないようです(ACC&D2010)。(p56)

 

★のらぬこの補足★

酢酸メゲストロールは経口投与が可能なため、野良猫の繁殖抑制に手軽に用いることができる印象がありますが、ACC&Dのレポートを読む限り「切り札」として期待されているとは言い難いという印象があります。その要因として、

 

・効果を持続させるには、継続的な投与が必要である

・野良猫の場合、適切な投与量をピンポイントに特定の猫に投与するのが難しい

・他の動物が誤って食べてしまうおそれがある、また人が誤って触れてしまうリスクがある

・副作用の面から、長期的な投与は推奨されない

・黄体ホルモンそのもののため、拡散すると生態系に影響を与える懸念がある

 

といったものが考えられます。あくまでも緊急避難的措置として、外科的処置までの「つなぎ」ととらえるのが妥当なのかもしれません。