メドロキシプロゲステロン酢酸エステル(MPA)は主に医学領域で、避妊、閉経期のホルモン療法、子宮内膜症、子宮の異常出血、性的倒錯、一部の癌の治療に用いられるプロジェスチンです。比較的古いタイプで長年用いられているプロジェスチンです。日本ではプロベラ®、ヒスロン®といった商品名で販売されています。
かつては犬の注射用避妊薬として米国でも用いられていましたが、その副作用から米国の獣医師たちの信頼を失い、米国においてプロジェスチンの使用が忌避されるきっかけを作った薬剤であることは前述のとおりです。
医学領域で広く用いられているプロジェスチンで、日本でも米国でも医薬品として承認されていますので比較的入手しやすい薬剤ですが、効果が低く副作用が強いというイメージが払拭できず、獣医療域において積極的に用いられているとは言い難いのが現状です。
Alliance for Contraception in Cats & Dogs (猫と犬の避妊のための同盟:ACC&D)のレポート"Contraception and Fertility Control in Dogs and Cats"(2013)にはこう記述されています。
MPA has been administered to bitches and queens as a long-acting injectable treatment, but this has not suppressed estrus as effectively as MGA, and in bitches was associated with a “high incidence of side effects” including uterine disease and skin- and hair-related manifestations. MPA should not be used in cats (Kutzler and Wood 2006).
MPA は長時間作用型の注射剤としてメス犬とメス猫に投与されていますが、MGA ほど効果的に発情を抑制できず、メス犬では子宮疾患や皮膚や被毛に関する症状など「高い副作用の発生率」と関連付けられています。MPAは猫には使うべきではありません(Kutzler and Wood 2006)。(p56-57)
Plumb’s Veterinary Drug Handbook, 7th Edition notes that “if MPA is administered subcutaneously, permanent local alopecia, atrophy, and depigmentation may occur” and recommends injecting subcutaneously in the inguinal area.
Plumb's Veterinary Drug Handbook, 7th Editionでは、「MPAを皮下投与した場合、永久的な局所脱毛、萎縮、色素脱失が生じることがある」と記載されており、鼠径部に皮下注射することが推奨されています。(p57)