プロジェスチンによる発情抑制<オスの場合>

プロジェスチン(黄体ホルモン剤)はメスの犬や猫の発情抑制に用いられていますが、理論的にはオスの犬や猫の発情抑制にも効果があるはずです。

 

教科書的にはプロジェステロンが視床下部や下垂体に作用し、負のフィードバック(ホルモンが十分だからもう分泌しなくてもよいと指令を出す)によってLH(黄体形成ホルモン)の分泌を抑制することにより、テストステロンの分泌を抑制するという理解ですが、プロジェステロンが直接中枢神経に作用し、オスの性機能を減衰させるというルートも、日本の岡山大学などの研究チームによって発見されています。

https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id542.html

 

しかしそれは簡単なことではないようです。Alliance for Contraception in Cats & Dogs (猫と犬の避妊のための同盟:ACC&D)のレポート"Contraception and Fertility Control in Dogs and Cats"(2013)にはこう記述されています。

 

In male dogs, semen quality did not change or changed insignificantly when MGAwas administered orally; subcutaneous administration of MPA [medroxyprogesterone acetate] at 4 mg/kg or 10 mg/kg did not affect sperm quality; “however, subcutaneous administration of MPA 20 mg/kg produced rapid response (within 3 days) with significant decreases in sperm motility, morphology and output” (Kutzler and Wood 2006). Higher doses can be expected to be accompanied by higher rates of side effects (Asa, personal communication 2012).

 

オス犬では、MGA(酢酸メゲストロール)を経口投与した場合、精液の質は変化しなかったか、わずかに変化しました。4mg / kgまたは10mg / kgのMPA (メドロキシプロゲステロン酢酸エステル)の皮下投与は精子の質に影響を与えませんでした。「しかし、MPA 20 mg / kgの皮下投与は、精子の運動性、形態、および産出量の有意な減少を伴う迅速な反応(3日以内)をもたらしました」(Kutzler and Wood2006)。より高い用量は、より高い副作用率を伴うと予想される可能性があります(Asa、パーソナルコミュニケーション2012)。(p57)

 

★のらぬこの補足★

簡単にまとめると、酢酸メゲストロールはオス犬の精子生成にあまり影響を与えず、メドロキシプロゲステロン酢酸エステルはある程度の高用量であればオス犬の精子生成を抑制できるのだそうです。レポートの行間を読めば、プロジェスチンはオス犬の発情抑制に効果があるが、効果が発現するような投与量だと副作用が心配だということです。