ホルモンベースの避妊薬の特徴と限界

飼い主がいない犬や猫はどうするか?

性ステロイドやGnRH作動薬といったホルモンベースの避妊薬は、定期的な投与が必要で、しかも投与をやめれば繁殖を再開できるという特徴があります。それは目的によって、利点にも欠点にもなりえます。例えば繁殖させたいが増えすぎると困るといった場合に、飼い犬や飼い猫の繁殖をコントロールする、もしくは避妊によるホルモンバランスの変化が性格に及ぼす影響を見極めるといった使い方には有効ですが、飼い主がいない犬や猫の人道的な個体数調整には、避妊薬より避妊去勢手術が現実的です。

 

なぜなら、飼い主がいない犬や猫に対する避妊処置に求められることは「1回の処置で完結させること」だからです。避妊薬の注射を打つために、野良犬や野良猫を定期的に捕獲することは非効率的ですし、そもそも捕まりません。後述しますが、ACC&Dは数年間有効なGnRH作動薬のインプラント剤が野良猫の繁殖管理に有効であるとしていますが、それとて「死ぬまで有効」ではありません。現時点においては避妊去勢手術が現実的かつ確実な避妊方法なのです。

 

避妊薬の限界

犬や猫を、人間による管理という観点から分類すると、おそらくこのようになります。

 

1 飼い主の管理下にある飼い犬・飼い猫

2 シェルターや里親の元にいる保護犬・保護猫

3 飼い主の管理下にない(放し飼い)飼い犬・飼い猫

4 人間と関わりを持つ野良犬・野良猫

5 人間と関わりがない野良犬・野良猫

 

人間による管理度は、1から5の順に低下します。それぞれのケースで可能な避妊手段について考えてみます。

 

飼い犬・飼い猫および保護犬・保護猫

避妊薬(飲み薬、注射、インプラント)および避妊去勢手術が可能です。また、オスとメスを分けるといった繁殖制限も可能といえば可能です(推奨はしませんが)。

 

放し飼いの犬や猫

避妊薬(飲み薬、注射、インプラント)は微妙ですが不可能ではありません。飼い主が捕まえることが可能なのであれば避妊去勢手術は可能です。

 

人慣れした野良犬・野良猫

避妊薬(飲み薬)は条件付きで可能です。避妊薬(注射、インプラント)は不可能ではありませんが非現実的です。捕獲できれば避妊去勢手術は可能です。

 

人慣れしていない野良犬・野良猫

避妊薬の定期的投与は困難かつ非現実的です。捕獲できれば避妊去勢手術は可能です。