飼い主のいない猫の避妊 その3

ACC&D(Alliance for Contraception in Cats & Dogs:猫と犬の避妊のための同盟)は、飼い主のいない猫への避妊去勢手術の代替手段として、GnRH作動薬のデスロレリンインプラントに関心を持っていて、机上のシミュレーションによると外科的避妊去勢手術と同様の個体数抑制効果があるとされています。しかし非外科的方法には、ひとつの技術的問題があります。ACC&Dのレポート"Contraception and Fertility Control in Dogs and Cats"(2013)には、こういう記述があります。

 

Animals returned to feral colonies should be vaccinated against rabies and, if possible, identified in some way to prevent their recapture and re-treatment. Some programs use ear tipping for this purpose; however, identification of animals sterilized non-surgically is typically regarded as a barrier to acceptance of non-surgical approaches. In fact, effects of accidental re-treatment would have to be understood and addressed to the satisfaction of regulatory agencies before a product could be labeled for use on feral animals and before organizations using TNR and similar strategies would actually use it. 

 

野生のコロニーに戻された動物は、狂犬病ワクチンを接種し※、可能であれば、再捕獲や再処置を防ぐために何らかの方法で識別する必要があります。この目的のために耳カットを行うプログラムもあります。しかし、非外科的避妊処置を行った動物の識別は、通常、非外科的方法を受け入れる上での障壁と見なされます。実際、ある製品が「野生」の動物に使用可能という表示をする前に、またTNRや同様の方法を用いる組織が実際にそれを使用する前に、偶然の再処置の影響を理解し、規制当局の要求を満足させるよう対処する必要があるでしょう。(p118)

 

★のらぬこの補足★

TNRの際には、再捕獲や再処置による猫の負担を防ぐために、処置済みの個体の耳カットを行うことが一般的です。耳カットは避妊去勢手術の際に麻酔が効いた状態で行うので、そのためだけに麻酔をかける必要はありません。しかし非外科的な方法で、しかも麻酔が必要ない(鎮静くらいは必要かもしれませんが)ということになれば、耳カット以外の方法で、どのように処置済みの猫を識別するかという問題が生じます。ここをクリアしない限り「野良猫に使用可能」という承認は得られないでしょうし、現場も混乱すると考えられます。