TNR(Trap-Neuter-Return)が、飼い主がいない猫の個体数の人道的管理の手法として始まってからずいぶん経ち、現在ではシェルターメディスンの一分野として研究が進んでいます。その結果、ただ漫然とTNRを実施するだけでは、思うように野良猫の個体数が減らないことがわかってきました。そこで近年、「戦略的な」TNRについて検討されるようになりました。
米国のTNR支援団体”PetSmart Charities”のBryan Kortisによって書かれた” PetSmart Charities Community TNR: Tactics and Tools”(2014)(地域のTNRの戦略とツール)というレポートは、TNRの方法論ではなく、TNRという手法を用いて限られた資源の中で、いかに効率的に野良猫の個体数を減少させていくかというロードマップを示しています。
そこで示されている「地域のTNR活動における3つの戦略(Three tactics of a community TNR program)」は次のとおりです。(p19)
Targeting(対象を絞ったTNR)
Intensive TNR in colonies & areas with high numbers of cats
猫の数が多いコロニーや地域で集中的にTNRを行う
→Reduce cat population, intake & complaints
→猫の個体数、受入数、苦情数の削減
Return to Field
Spay/neuter & return healthy, unadoptable cats brought to shelters
シェルターに持ち込まれた、健康で譲渡不適の猫を避妊去勢手術して元の場所に戻す
→Reduce euthanasia, promote culture change
→安楽殺の削減、意識変容の醸成
Grassroots Mobilization(住民参加)
Provide training, equipment, support & free or low-cost services
トレーニング、設備、サポート、無料または低コストのサービスを提供する
→Build awareness, gradual population decline
→認知度の向上、緩やかな個体数の減少
この3つの戦略を地域の事情に合わせて組み合わせて実施していくことが、野良猫の個体数を減らすための「最先端のTNR」(edge of TNR)であるとKortisは述べています。(p3)
Return to Fieldについては過去に詳しく解説しましたので、そちらを参照していただくとして、聞きなれない「Targeting」や「Grassroots Mobilization」について一緒に学んでいくことにしましょう。