Kortis (2014)は、TNRの使命(Mission)についてこう述べています。
The primary goal of a community TNR program is to reduce the free-roaming cat population. Other objectives include improving public health and providing as good a level of care for the cats as reasonably possible. Another goal that has emerged in recent years is the direct lowering of euthanasia at open admission shelters through Return to Field programs, discussed in Chapter 5.
地域のTNR活動の第一の目標は、外猫の個体数を減少させることです。その他の目標としては、公衆衛生の向上と、合理的に可能な限り猫に良いレベルのケアを提供することがあげられます。また近年では、第5章で述べるReturn to Field(RTF)事業により、全頭受け入れ型のアニマルシェルターでの安楽殺を直接的に減少させるという目標も出てきています。※1
外猫の個体数減少
外猫(free-roaming cat)の個体数を減少させるということは、アニマルシェルターに持ち込まれる猫の数を減らすことにつながります。それは猫の安楽殺数削減に直接つながりますし、猫の世話や譲渡活動などに割くリソースも増大しますので、健全な猫の譲渡促進によって間接的に助かる猫の数も増大します。そこにRTFを組み合わせると、さらなる安楽殺数削減につながります。また外猫の個体数減少は地域住民からの苦情を減らし、野生生物の捕食被害も低減します。
公衆衛生の向上
ここでいう「公衆衛生」には、生活環境の保全が含まれます。避妊去勢手術を施した猫は騒音や悪臭、徘徊といった迷惑行動が減少します。また米国においては、狂犬病ワクチンの接種もTNRの重要な目的となっています。
外猫の福祉の向上
Kortis (2014)は、リターンした後の猫を人道的に世話すること自体がTNRの目的であると述べていて、猫の世話人への支援の必要性について強調しています。
After being altered and released, cats may live for many years and their humane care and well-being is an important goal for its own sake. A community TNR program that deals with a large volume of cats cannot itself assume responsibility for all the cats it releases — this would be too large a financial and logistical burden. What a program can do is support the caretakers, the people who provide for the cats on a daily basis.
避妊去勢手術を施され元の場所に戻された後、猫は何年も生きることができ、その人道的な世話と福祉はそれ自体が重要な目標です。大量の猫を扱う地域TNR活動は、リターンするすべての猫に対して責任を負うことはできません。それは財政的な理由もありますし、そもそも実行が難しいという側面があります。活動の一環としてでできることは、日常的に猫を世話している世話人を支援することです。※2
※1 ” PetSmart Charities Community TNR: Tactics and Tools” Bryan Kortis (2014),p9
※2 同上,p13