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地域レベルのTargeting(TNR)その2

Targeting(集中的TNR)は、コロニーレベルだけではなく地域レベルでも実施することができますが、実施方法には工夫が必要です。Bryan Kortis (2014)の” PetSmart Charities Community TNR: Tactics and Tools”を参考に、できるだけわかりやすく述べていきたいと思います(p29を参考にしました)。

 

地域レベルのTargetingの考え方

前回から、「猫町」という仮想の地域でTNRを実施すると仮定しています。もし「猫町」のTNRが地域住民の自主事業(grassroots mobilization)だけで行われ、各地区(郵便番号で分けられた4つの地区)で無作為に一斉捕獲(mass trapping)したとしたら、図7のような結果になるかもしれません。

この場合、処置済みのコロニーの規模は縮小しますが、隣接するコロニーから未処置の猫が流入してくる可能性があります。外猫の移動(”migration”「渡り」と表現されていますが)はこのような場合に起こります。

 

1 未処置のコロニーで猫の個体数が増大し、地域資源(食料やねぐら)が猫の個体数を支えきれなくなり、コロニーから猫が流出する

2 処置済みのコロニーで猫の個体数が減少し、地域資源が個体数を上回ることにより、コロニーに猫が流入する

3 未処置の放浪猫がたまたまコロニーに居つく

 

コロニー間の移動の影響を最小限に抑えるために、「猫町」TNRでは、20件の手術を割り当てる際に、コロニーのTargetingだけでなく、地域レベルのTargetingを実施することができます。TNRの対象を「郵便番号4」の地域に絞ることで、この地域にいる25匹の猫のうち20匹(80%)が手術を受けることができます。そうなれば「郵便番号4」の4つのコロニーすべてで、構成員のほとんどまたはすべてが避妊去勢手術を受けていることになります(図8)。

手術率の高さに加え、近くに未処置のコロニーが存在しないため、「郵便番号4」内のTNR済みコロニーに未処置の猫が移動する可能性は大幅に減少することになります。地区を越えたコロニーからの移動はあるかもしれませんが、個体数の減少を食い止めるほどではないと考えられます。