Targeting(集中的TNR)はコロニーや地区を絞って集中的にTNRを実施する手法ですが、外猫の分布状況を調査して実施場所を選定したとしても、そこで集中的な猫の避妊去勢手術を実施できるだけの能力を有しているかどうかが問題になります。その考え方について、Bryan Kortis (2014)の” PetSmart Charities Community TNR: Tactics and Tools”を参考に、できるだけわかりやすく述べていきたいと思います(p37-38を参考にしました)。
対象地区とリソースの整合(Aligning resources with the target area)
以前も登場した「猫町」という仮想の地域でTNRを実施するとします。調査により、「郵便番号3」地区は「猫町」の100匹の外猫のうち50匹が生息している「ホットスポット」であると推定されました。しかし「猫町」TNRの手術能力は10件しかありません。そこで、地区内の2つのコロニーの猫の集中TNRを実施したとしても、対象のコロニーの縮小効果は期待できますが、地区としては手術率20%で、しかも未処置の猫が40匹残っていますので、あまり効果はないかもしれません(図10)。
一方「郵便番号1」地区には12匹の外猫がいると推定されています。ここで発想を変え、「郵便番号1」地区の外猫10匹に避妊去勢手術を実施すれば、この地区の外猫のほとんどに避妊去勢手術を実施することができ、「郵便番号1」地区における外猫の個体数減少を効率的に達成することができます(図11)。
逆に「猫町」TNRの手術能力が70件であると仮定すれば、「郵便番号3」地区にこだわらず、地域全体を対象として集中TNRを実施し、地域全体の避妊去勢率70%を目指すという戦略も可能です(図12)。
この例からも、TNRにおける避妊去勢手術能力確保の重要性がわかっていただけるのではないかと思います。