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Return to FieldとTNRを組み合わせる その1

Bryan Kortis (2014)が” PetSmart Charities Community TNR: Tactics and Tools”で示した「地域のTNR活動における3つの戦略(Three tactics of a community TNR program)」の2つ目は”Return to Field”(RTF)です。RTFについては以前に詳しく述べましたので、ここではTNRとの関わりの部分のみ触れていきたいと思います。

 

TNRとRTFの違い

しつこいようですが、TNRとRTFはその実施主体も目的も全く異なります。TNRは動物保護団体や野良猫の世話人などの地域有志が野良猫を捕獲し、避妊去勢手術を施し元の場所に戻す地域活動です。RTFはアニマルシェルターに持ち込まれた野良猫のうち、健康でかつ譲渡不適と判断されたものに避妊去勢手術を施し元の場所に戻すシェルター事業です。

つまり、TNRは野良猫をシェルターに持ち込む代わりに地域で管理しながら共存していこうとする動物保護活動の一面もありますが、野良猫に避妊去勢手術を施し、繁殖行動に起因する環境被害を防止しながら、ゆくゆくは個体数を減らしていこうという、地域環境保全活動の意味合いが強いのです。対してRTFは純粋にアニマルシェルターにおける安楽殺を回避するためのシェルター事業です。

 

RTFの限界

最新のTNRの理論によると、たまたまアニマルシェルターに持ち込まれた野良猫に避妊去勢手術を施し元の場所に戻したとしても、そのコロニーにおける猫の個体数にほとんど影響を与えません。要するに野良猫の個体数を減らすにはTargeting(TNR)によるしかなく、RTFでは野良猫が減らないのです。RTFによってシェルターにおける野良猫の安楽殺数は減るかもしれませんが、個体数が減らない以上、自転車操業が続きます。手術や輸送などRTF事業に投入される膨大なリソースを考えると、これは事業の効率性の問題にとどまらず、事業自体の持続可能性の問題にもなってきます。

 

RTFとTNRの協働

そこでKortis (2014)は、RTFとTNR活動を「組み合わせる」ことを提案しています。

 

The way to address these issues is by making Return to Field an important part of a community TNR program, but not the only element. Concurrently employing other tactics such as targeting and grassroots mobilization will allow a community to gain the benefits of Return to Field while also getting to the heart of the matter — reducing the number of cats out on the streets. 

このような問題に対処するためには、Return to Fieldを地域のTNR活動の重要な一部とすることですが、唯一の要素ではありません。Targetingや草の根動員など、他の方法を同時に採用することで、地域はReturn to Fieldの恩恵を受けながら、問題の核心である外猫の数を減らすことができます。

※” PetSmart Charities Community TNR: Tactics and Tools”,p71