野良猫のコロニー情報の登録や管理について、Bryan Kortis (2014)の” PetSmart Charities Community TNR: Tactics and Tools”から見ています。
コロニー情報の入力
コロニー情報の登録は、パソコンのデータベースソフトを用いて実施します。基本的機能を備えたソフトで十分です。TNR活動の担当者がデータ入力を行う場合、収集する情報を最低限に絞る必要があります。入力作業が煩雑になることによりデータの更新が遅れ、結果的に古いデータが用いられることを避けるためです。
ニューヨークのNeighborhood CatsのようなTNR活動では、各世話人が自分が管理するコロニーの情報を入力できるオンラインデータベースを開発して、担当者による入力の手間を省くことに成功しています。(p112)
情報公開の問題
TNRが条例で規定されている米国の自治体では、コロニー情報の管理者について条例で定められていることもありますが、多くの場合「草の根動員」の主幹機関がコロニー情報を収集し管理することが多いと思います。しかし主幹機関が行政機関やみなし行政機関の場合、収集したデータが情報公開の対象になることがあるので注意が必要です。米国や日本のほとんどの自治体には情報公開に関する条例があり、行政機関が収集した情報について公開を求められた場合、個人情報等一部の例外を除き、公開しなければなりません。一般的に野良猫の世話人は、自らの身元やコロニーの場所を明らかにしたくはありません。そのため、情報が公開されるかもしれないという危惧が、データ収集の障害になる可能性があります。それを考えると、みなし行政機関に該当しない民間団体がデータを収集するのが無難かもしれません。(p112-113)
情報漏洩の問題
民間団体には情報公開条例が適用されませんが、情報漏洩のリスクはあります。世話人から安心してコロニーのデータを提供してもらうには、収集したデータにアクセスできる人を制限したり、データの適切な利用についてのガイドラインを定めたりする必要があります。また研究目的などで、個人や住所を特定しない形でコロニー数や猫の数といったデータを外部に提供する可能性がある場合、そのことについても完全にオープンにしておく必要があります。(p113)
データ収集機関そのものへの信頼
仮にデータ収集を行う幹事機関が、過去において野良猫の殺処分を行っていたとすれば、世話人は喜んでデータを提供しないかもしれません。その場合も、世話人たちに信頼されている他の機関がデータ収集に携わることが望ましいかもしれません。(p113-114)