日本にも犬猫(主に猫)の避妊去勢手術に特化した動物病院、いわゆる「スペイクリニック」が増えてきました。また常設のクリニックでなくても、会場を借り上げ、日にちを決めて一斉に犬猫の避妊去勢手術手術を行うようなイベントも増えてきたように思います。それらの中にはボランティアを受け入れているものもありますが、何をするのかよくわからないという理由で二の足を踏む方や、勇気をもってボランティアに参加しても、何をしてよいのかよくわからずもどかしい思いをしたという方もいるのではないでしょうか。そこで、スぺイクリニックや一斉手術等でお手伝いをしたい!という方向けに「スペイクリニックの歩き方」と称して情報提供をしていきたいと思います。私も初心者ですので、一緒に学んでいきたいと思います。
日本のスペイクリニックは1~数人の獣医師によって運営されている小規模なものが多いのですが、米国ではASPCA(米国動物虐待防止協会)や各地のSPCAをはじめ、さまざまな非営利団体が大規模なスペイクリニックを運営しています。フロリダには1日200件の手術能力を持つスペイクリニックもあります。そういったクリニックは、当然ながら様々な職種の多数のスタッフを抱えています。具体的には
獣医師:執刀だけではなく、手術前検査や術後管理などを担います。
獣医看護師(Veterinary Technician:VT):国家資格を持った看護職です。
獣医助手(Veterinary Assistant:VA):国家資格を持たない助手職です。高卒以上であれば学歴や経歴は不問で、非常勤で働く人も多いといいます。研修会を受け試験に合格し、米国獣医看護士全国協会(NAVTA)から認定された「認定獣医助手」(Approved Veterinary Assistant:AVA)という人もいます。
事務職員:施設管理や会計管理、広報や法的手続きなど、事務処理を専門に担うスタッフがいると効率が格段に上がります。
ASPCAのスペイクリニックでは、新規採用職員にはこれらの職種ごとに教育目標を定め、体系的に教育していきます。この連載では、ASPCAのスペイクリニックで用いられている、サポートスタッフとして現場で働くVAの新人研修マニュアルを紹介していきます。これは米国の大規模なスペイクリニックにおけるマニュアルのため、猫が主体で比較的小規模な日本のスペイクリニックには必ずしも当てはまらない部分もありますが、これを読んでいけばスペイクリニックの業務の流れや、サポートスタッフとして何ができるか、何をしなければならないかといったことが何となく理解できるのではないかと思います。予備知識を得たら、とりあえず現場に飛び込んでみてください(あくまでも機会があればの話ですが)。知識と経験を組み合わせることで、理解が飛躍的に深まることうけあいです。