全体の流れ
ASPCA (米国動物虐待防止協会)のスペイクリニック(犬猫の避妊去勢手術に特化した動物病院)の新人研修マニュアル“Just-in-Time On-boarding Manual” (2020)を見ながら、スペイクリニックにはどのような仕事があるのかを見ていきたいと思います。
とはいえこのマニュアルは導入部分がなく、唐突に内容に入るので(研修のレジュメですからね)、予備知識なしに読むと戸惑う方もいるかもしれません。そこで、スペイクリニックの全体の業務の流れについて簡単におさらいしておきたいと思います。この記事も参考にしてください。
手術チームの編成
理想的なチーム編成として、獣医師1名、獣医看護師1名、獣医助手2名が想定されていて、マニュアルもそれが前提になっています。
患者の受け入れ
手術対象の動物は朝8時~8時30分に受け付けて、最初の手術を9時から開始することを目標とします。一般的に、犬と猫の両方を扱うスペイクリニックでは、犬の手術を午前中に、猫の手術を昼休み前~午後に行います。そのため、犬を先に受け付けて診察を行い、猫を受け付けて診断を行っている間に、看護師が犬の前投薬を行います。同時に助手のひとりが手術室のスタンバイを行っておけば、猫の診察が終了する頃には最初の犬の手術が可能になります。猫は犬とは別の部屋に置き、手術のタイミングに合わせて前投薬を行います。
手術の開始
一般的な外科手術においては、執刀医と助手の2名の獣医師で手術を行いますが、HQHVSNスタイルの避妊去勢手術は獣医師1名で手術を行います。看護師は獣医師の指示のもと、前投薬や挿管といった医療行為を行いますので、執刀医のアシストの大部分は助手の仕事になります。その業務は患者の保定や移動だけではなく、手術器具の洗浄や滅菌、カルテの記入や確認など多岐にわたります。
手術後の片づけ
最後の猫の手術が始まったら、助手は手術室の後片付けに入ります。手術が終わったら、すべての手術器具を洗浄・滅菌し、手術室全体を清掃・消毒します。
動物の退院
手術室の清掃中に獣医師が手術後の動物の回復状況を確認します。助手は手術室の清掃が終了したら、回復後の動物の退院作業に入ります。退院は手術が終わった順に行い、犬が先、猫が後になります。クリニックによっては、手術後の動物を一晩入院させ、翌日に退院させることもあります。