安全な麻酔の目標(Goals of Safe Anesthesia)

ASPCA (米国動物虐待防止協会)のスペイクリニック(犬猫の避妊去勢手術に特化した動物病院)の新人研修マニュアル“Just-in-Time On-boarding Manual” (2020)には、麻酔について触れられています。しかしこのマニュアルは一般スタッフの「獣医助手」向けですので、理想的な麻酔のあり方についての概念がさらりと触れられていて、演習問題も設定されていません。

 

Goals of Safe Anesthesia

安全な麻酔の目標(p5)

 

• Decrease stress

ストレスを軽減する

• Produce unconsciousness

意識を消失させる

• Provide analgesia

鎮痛作用の付与

• Foster amnesia

健忘の促進

• Maintain immobilization and muscle relaxation

不動化と筋弛緩の維持

• Multimodal analgesia

マルチモーダル鎮痛(作用機序の異なる複数の鎮痛剤を用いる)

• Incorporate potentially reversible agents

可逆性のある薬剤を取り入れる

• Well-known drugs, reliable and cost-effective for HQHVSN environments

HQHVSN環境において信頼性が高く、費用対効果の高い、よく知られた医薬品

 

(のらぬこの補足)

一般の動物病院でペットの動物に行われる避妊去勢手術とは異なり、スペイクリニックや一斉手術で行われる避妊去勢手術はHQHVSN(高品質かつ大量の避妊去勢手術)と呼ばれます。もちろんどちらであっても麻酔の基本は変わりません。しかしHQHVSNには特有の事情があり(例えば野良猫のTNRの場合、リターン後に鎮痛剤や抗生剤の追加投与は困難です)、一般的な獣医療とは薬剤の処方が若干異なります。HQHVSNで用いる薬剤は、HQHVSNの現場でよく用いられ、効果や安全性についてよく知られているものが望ましいといえます。