ASPCA (米国動物虐待防止協会)のスペイクリニック(犬猫の避妊去勢手術に特化した動物病院)の新人研修マニュアル“Just-in-Time On-boarding Manual” (2020)の、麻酔と患者のモニタリング(Anesthesia/Patient Monitoring)についての演習問題について見ていこうと思いますが、例によって前置きなしでいきなり専門用語から入るので、麻酔器の基本についてご紹介しておきます。
<教養としての麻酔器の基本>
吸入麻酔とは、ものすごく簡単に言うと、酸素や亜酸化窒素(笑気)に揮発させた麻酔薬を混合したものを動物に吸わせて麻酔をかけることです。そのための器械が麻酔器ということになります。麻酔器は、だいたいこのような構成になっています。
・ガスボンベ(酸素または亜酸化窒素)
・減圧弁(ガスボンベからガスが一気に出ないようにする)
・流量計(ガスの流量を調整する)
・気化器(麻酔薬を気化させるとともに、気化した麻酔薬の濃度を下げるための装置:麻酔器の心臓部分ともいえる重要な部分)
・吸気弁/呼気弁(回路内をガスが一定方向に流れるようにするための弁)
・排気弁(内圧を調節するための弁)
※pop-off valve(ポップオフ弁)、pop-off occlusion valve(ポップオフ閉塞弁)、occlusion valve(閉塞弁)、adjustable pressure limiting valve(除圧弁)など色々な言い方があるため、翻訳者泣かせです。
・呼吸バッグ(ガスのリザーブや人工呼吸など、いろいろと役立つゴム製の袋)
・キャニスター(呼気から二酸化炭素を回収する装置で、中に吸収剤が入っている)
・蛇管(麻酔器から動物に伸びる蛇腹状の長い管:この先にマスクやチューブを装着する)
・内圧計(回路内の内圧を測定・監視する:ASPCAのマニュアルでは20cmH2Oを超えてはならないとされている)