TNRの際に野良猫に施される「適切な」獣医療について、ウィスコンシン大学マディソン校のFerrell博士によるQ&A(https://www.uwsheltermedicine.com/library/resources/what-is-recommended-for-tnr-programs-and-management-of-community-cats)(2019)をご紹介しています。
2. Do you treat wounds on feral cats?
2.野良猫の傷を治療しますか?
Referring back to the prior question, treating wounds in feral cats will vary wildly by the individual case. If they have old or healing scars, no treatment may be necessary; however active wounds and/or infections may require more intensive treatment. Long-acting injectable antibiotics can be a great resource to help treat/prevent infections also. Based on the severity of the wound, your veterinarian may recommend that further care be pursued by the caretaker with their primary care veterinarian, recommend sheltering the cat temporarily if he is sociable, or recommend humane euthanasia in severe cases.
前の質問に戻ると、野良猫の傷の治療は個々のケースによって大きく異なります。古い傷跡や治癒中の傷跡がある場合は、治療は必要ありません。ただし、新しい傷や化膿した傷の場合、より集中的な治療を必要とする場合があります。また、長時間作用型の注射用抗生物質は、感染の治療や予防に役立つ素晴らしいリソースです。傷の程度に応じて、獣医師は、世話人がかかりつけの獣医師とさらなるケアを追求することを勧めたり、猫が人馴れしている一時的に保護することを勧めたり、重症の場合は人道的な安楽殺を勧めたりすることがあります。
【のらぬこの解説】野良猫、特にオス猫に傷はつきものです。顔が古傷だらけのボス猫も珍しくはありません。古傷であれば治療の必要はありませんが、新しい傷であれば縫合等の処置が、化膿していれば傷の洗浄や抗生剤の投与が必要かもしれません。
ここで登場する「長時間作用型の注射用抗生物質」とは、野良猫医療の分野で多用されているセフェロスポリン系抗生物質で、商品名でいえば「コンベニア注」です。この抗生剤は皮下注射後14日間有効で、抗生剤投与の都度捕獲することが困難な、野良猫の処置には欠かせない薬です。細菌性皮膚感染症や細菌性膀胱炎、猫の口内炎などによく用いられています。しかしこの薬は非常に高価で、しかも要冷蔵で取り扱いが面倒、8週齢未満の子猫には使えないなどの制約があります。また強い薬ですので、猫の体調を見ながら真にやむを得ない場合に用いられます。