長時間作用型抗生物質の使用

TNRの際に野良猫に施される「適切な」獣医療について、ウィスコンシン大学マディソン校のFerrell博士によるQ&A(https://www.uwsheltermedicine.com/library/resources/what-is-recommended-for-tnr-programs-and-management-of-community-cats)(2019)をご紹介しています。

 

3. Do you give long-acting antibiotic shots to feral cats?

野良猫に長時間作用型の抗生物質を投与しますか?

As mentioned above, long-acting antibiotics can be given to cats to treat/prevent infection as recommended by your veterinarian. We do not recommend systematically giving antibiotics post-operatively unless there are signs or risk of infection.

前述のとおり、獣医師の推奨に従って、感染症の治療や予防のために長時間作用型抗生物質を猫に投与することがあります。感染の兆候やリスクがない限り、術後に抗生物質を機械的に投与することはお勧めしません。

 

【のらぬこの解説】「長時間作用型抗生物質」としてよく用いられているのが「コンベニア注」(ゾエティス・ジャパン)です。これは1回皮下注射すると14日間効果が持続するというもので、セフォベシンナトリウム(セファロスポリン系)が有効成分です。皮膚感染症の原因となる細菌に広く効果を示す「広域スペクトル」の抗生物質です。

しかしながら、耐性菌の発生防止の観点から抗生物質を濫用しないというのが現在の医療のトレンドですので、安易な使用は奨励されません。

 

It is important to consider that long-acting antibiotics do not cover mycoplasma, one of the most common secondary bacterial infections we see with feline upper respiratory infections.

猫の上気道感染症で最もよく見られる二次的な細菌感染症の一つであるマイコプラズマは、長時間作用型の抗生物質ではカバーできないことを考慮する必要があります。

 

【のらぬこの解説】メーカーによると(https://www.zoetis.jp/ca/cats/convenia/)

「コンベニア注」に感受性を示す(効果がある)とされている細菌は次のとおりです。

 

スタフィロコッカス・アウレウス

スタフィロコッカス・インターメディウス

スタフィロコッカス・シュードインターメディウス

スタフィロコッカス・シムランス

プロテウス・ミラビリス

パスツレラ・ムルトシダ

大腸菌

レンサ球菌属

ポルフィロモナス・グラエ

ポルフィロモナス・サリボサ

その他のブドウ球菌属

 

この中にはマイコプラズマは含まれていませんし、当然ながらウイルスには効果がありません。何でもかんでも効くというものではないのです。