野良猫のレトロウイルス検査

TNRの際に野良猫に施される「適切な」獣医療について、ウィスコンシン大学マディソン校のFerrell博士によるQ&A(https://www.uwsheltermedicine.com/library/resources/what-is-recommended-for-tnr-programs-and-management-of-community-cats)(2019)をご紹介しています。

 

4. Do you FIV/FeLV test feral cats?

野良猫のFIV / FeLV検査を実施しますか?

a. If so under what circumstance?

もし実施するなら、どのような状況なら実施しますか?

b. Do you euthanize FIV/FeLV positive cats rather than return to a colony?

FIV / FeLV陽性の猫をコロニーに戻さず、安楽殺しますか?

A complete discussion of recommendations on retrovirus testing in feral cats can be found at this link. In short, it is not recommended to FeLV/FIV test feral cats as the prevalence has been found to be similar to that of the pet cat population and some of the factors which lead to the spread of these viruses are strongly diminished with sterilization. Most importantly, sterilization of more cats is a better way to reduce infection rates than investing limited resources in testing.

野良猫でのレトロウイルス検査に関する推奨事項の完全な議論は、このリンクで見つけることができます。要するに、野良猫の有病率はペットの猫の集団と同様であることがわかっており、これらのウイルスの蔓延につながるいくつかの要因は避妊去勢手術によって大幅に減少するため、野良猫のFeLV/FIV検査はお勧めできません。最も重要なことは、限られた資源を検査に投入するよりも、より多くの猫に避妊去勢手術を施すことが感染率の低下につながるということです。

 

【のらぬこの解説】FIV(猫免疫不全ウイルス)やFeLV(猫白血病ウイルス)の検査については、TNR対象の野良猫と、譲渡を前提にアニマルシェルターや里親などに保護される猫とでは考え方が若干異なります。TNRの対象となる健康な野良猫については「検査しなくてもよい」というのが、現代のシェルターメディスンの考え方です。その理由として

 

・見た目が健康な猫についてはFIVやFeLVの感染率は極めて低く(1~数%)、これはペットの猫も野良猫も同様である。

・避妊去勢手術によって、ケンカや出産(母猫から子猫への感染)といった、FIVやFeLVの感染リスクのある行動を減らすことができる。

・検査に係る費用や人役は、避妊去勢手術に振り向けられるべきである。

 

といったことが挙げられています。ここで注意しなければならないのは、検査そのものを否定しているわけではなく、「避妊去勢手術に注力すべき」という考え方であることです。もし余力があるのであれば、してもよいのです。しかしその場合、陽性の結果が出たらどうするかをあらかじめ決めておく必要があります。