TNRの際に野良猫に施される「適切な」獣医療について、ウィスコンシン大学マディソン校のFerrell博士によるQ&A(https://www.uwsheltermedicine.com/library/resources/what-is-recommended-for-tnr-programs-and-management-of-community-cats)(2019)をご紹介しています。
6. What services do you routinely perform on feral cats?
野良猫に対して日常的に行っているサービスは何ですか?
野良猫に対する予防医療サービスをどこまで実施するかというのも、悩ましい問題です。避妊去勢手術のついでに投与できますし、もちろんやったほうがよいのですが、コストの問題もあります。
予防医療サービスをざっくりと分類すると、
・ワクチン接種(狂犬病、混合ワクチン)
・外部寄生虫駆除・予防(ノミ、ダニなど)
・内部寄生虫駆除(駆虫)
になります。それぞれについて見ていくことにしましょう。
a. Do you give rabies shots?
狂犬病の予防接種をしますか?
c. Do you give FVRCP vaccines?
FVRCPワクチンを接種しますか?
At the time of alter for a feral cat it is recommended to give an FVRCP and rabies vaccine.
野良猫の避妊去勢手術の際には、FVRCPや狂犬病のワクチンを接種することをお勧めします。
【のらぬこの解説】
FVRCP とは、猫ウイルス性鼻気管炎(Feline Viral Rhinotracheitis)、 カリシウイルス(Calicivirus)、汎白血球減少症(Panleukopenia)の略で、この3種に効果があるワクチンがFVRCPワクチン(いわゆる「3種混合ワクチン」)です。野良猫にワクチンを接種できる機会は避妊去勢手術時しかありませんから、この機会を逃す手はありません。FVRCPワクチンを接種したからといって、野良猫に起因する人獣共通感染症を防止できるわけではありませんが、野良猫の健康状態を良好にしておくことは、結果的にその他の感染症を予防することにもつながります。また地域住民に対して、野良猫の健康が管理されているというアピールにもなります。
日本のような狂犬病清浄国では、野良猫への狂犬病ワクチン接種は必要ありませんが、米国のような狂犬病発生国においては、狂犬病ワクチン未接種の野良猫をリターンすることは地域住民からの理解が得られにくいという問題があります。