野良猫の予防医学 その3

野良猫の予防医学 その3

TNRの際に野良猫に施される「適切な」獣医療について、ウィスコンシン大学マディソン校のFerrell博士によるQ&A(https://www.uwsheltermedicine.com/library/resources/what-is-recommended-for-tnr-programs-and-management-of-community-cats)(2019)をご紹介しています。

 

d. Do you deworm, and with what?

駆虫を実施しますか、また何を用いますか?

Oral deworming with a broad spectrum medication is not routinely recommended with TNR but some topicals —Advantage Multi and Revolution for instance— will also provide some deworming coverage for common internal parasites.

TNRの場合、広域駆虫薬による経口駆虫はあまりお勧めできませんが、アドバンテージ・マルチやレボリューションなどの外用薬で、一般的な内部寄生虫に対する駆虫を行うことも可能です。

 

【のらぬこの解説】一般的に「駆虫」とは腸内の寄生虫を駆除することを意味し、そのためには通常、いわゆる「広域駆虫薬」を投与します。「プロフェンダー」といった外用の広域駆虫薬もありますが、広域駆虫薬は基本的に経口投与です。野良猫に薬剤を経口投与することには技術的問題がある(適切な量を各個体に投与することが難しい)ため、一般的に経口薬による駆虫は行われません。

そもそも野良猫に駆虫が必要かどうかということですが、Shelter Medicine for Veterinarians and Staff, Second Edition(2013)によると、野良猫に駆虫を行うメリットは不明で、しかも成猫は寄生虫感染による健康上の問題が生じにくいため、野良猫の成猫の駆虫は必ずしも必須ではないとされています。子猫の場合は駆虫により健康上の恩恵を受ける可能性が成猫よりも比較的高いとされていますが、積極的に推奨しているわけではなく、個別に判断ということだと思われます。しかしそれは猫自身の健康上の問題であって、公衆衛生上の観点から言えば、人間に感染する可能性がある回虫や鉤虫については駆虫すべきと私は考えています。

回虫と鉤虫をターゲットとするのであれば、「アドバンテージ・マルチ」(「アドボケート」)や「レボリューション」といった外用のノミ駆除薬が有効とされています。特に猫に寄生する回虫は人間に対して重篤な症状を引き起こす可能性があるので、駆虫しておくことが地域住民の安心にもつながります。

※日本においては、「レボリューション」は鉤虫には適用外とされていますが、主成分のセラメクチンは鉤虫にも有効とされています。