野良猫の捕獲について

野良猫に施される「適切な」獣医療について、ウィスコンシン大学マディソン校のFerrell博士によるQ&A(https://www.uwsheltermedicine.com/library/resources/what-is-recommended-for-tnr-programs-and-management-of-community-cats)(2019)をご紹介しています。ここではアニマルシェルターが事業として野良猫の捕獲を実施しているかどうかという質問です。

 

7. Do you employ a paid cat trapper?

プロの捕獲人を雇っていますか?

Most shelters we work with do not employ cat trappers and feral cats are most commonly brought in for TNR/SNR by the public. However, many shelters will provide some cages to help catch cats.

私たちが協力しているほとんどのシェルターは猫の捕獲人を雇っておらず、野良猫はTNR/SNRのために一般の人々によって持ち込まれるのが一般的です。しかし、多くのシェルターは猫を捕まえるのを助けるためにいくつかのケージを提供します。

 

【のらぬこの解説】一般論で言えば、飼い主不明の猫を第三者が捕獲して避妊去勢手術を施すことは、米国でも日本でも違法です。それを前提に考えると、TNRのため第三者である捕獲人が猫を捕獲することはナンセンスであるということになります。専門のスタッフが手伝うことはあるかもしれませんが、捕獲の主体はあくまでもコロニーの世話人です。普段からコロニーを観察している世話人でなければ、その猫が本当に飼い主のいない野良猫かどうかはわからないからです。ちなみに、ASPCA(米国動物虐待防止協会)の”Special Considerations for Community Cats at Spay/Neuter Clinics”にはこう記述されています。

 

When a caretaker dedicated to a specific colony brings cats to the spay/neuter clinic for surgery, the program is generally referred to as a Trap, Neuter, Return (TNR) program. 

特定のコロニーに専従する世話人が、手術のために猫をスペイクリニックに連れていくことを、一般にTNR(Trap, Neuter, Return)プログラムと呼んでいます。

 

SNR(シェルターに収容された野良猫に避妊去勢手術を施し元の場所に戻す事業、RTFともいう)の場合は若干事情が異なります。シェルターに持ち込まれた猫のうち、飼い猫の可能性があるものについては、飼い主が名乗り出るための公示期間を設ける必要があります。公示期間が満了してはじめて、避妊去勢手術を施し元の場所に戻すことができます。この制度については米国も日本も同じですが、公示期間については条例や要領等で定められていて、その期間はまちまちです。ただし自治体によっては、収容状況などから収容された猫が明らかに野良猫であると判断された場合は公示を省略することが可能であったりします。