野良猫に施される「適切な」獣医療について、ウィスコンシン大学マディソン校のFerrell博士によるQ&A(https://www.uwsheltermedicine.com/library/resources/what-is-recommended-for-tnr-programs-and-management-of-community-cats)(2019)をご紹介しています。
10. Do you treat/adopt friendly cats with stomatitis?
口内炎の人馴れした猫を治療し譲渡しますか?
In regards to stomatitis, treatment/adoption will be based on the resources available. Many cases will require a dental procedure to remove some or all of the patient’s teeth in order to reduce inflammation. This is not curative in all cases. If dentistry is accessible, treatment prior to adoption is recommended. Otherwise, comfortable cats can be adopted out with a disclaimer that further medical work-up and treatments may be required; adopters should be informed that this may be a waxing and waning condition and might require long-term treatments. If dentistry is not accessible and the cat is evidently suffering, euthanasia may be a more humane alternative in severe/painful cases.
口内炎に関しては、治療や譲渡は利用可能なリソースに基づいて行われます。多くの場合、炎症を抑えるために、患者の歯の一部または全部を抜歯する歯科治療が必要になります。しかもすべての症例で治癒するとは限りません。もし歯科治療が可能であれば、譲渡前に治療することが推奨されます。そうでなければ、病状が安定している猫は、さらなる医学的検査と治療が必要かもしれないという免責事項とともに譲渡することができます。譲渡の際には、病状には波があり、長期間の治療が必要かもしれないことを伝えなければなりません。歯科治療が難しく、猫が明らかに苦しんでいる場合や、重度であったり痛みを伴う場合には、安楽殺がより人道的な選択肢となる可能性があります。
【のらぬこの解説】猫の慢性口内炎は「難治性口内炎」とも呼ばれます。その原因は免疫系の異常(FIVやFeLVの感染はこれにあたります)やアレルギー、栄養の問題、局所への細菌やウイルスの感染など様々ですが、長い間の治療が必要で、しかも完治が難しい疾患です。治療のために歯石除去や化学療法が試みられますが、それらの治療に反応しない場合、抜歯により細菌感染を軽減することが「ゴールデン・スタンダード」とされていて、奥歯をすべて抜く「全臼歯抜歯」や、歯をすべて抜く「全顎抜歯」が実施されます。ただ全臼歯抜歯で60〜70%、全顎抜歯で70〜80%の治療効果と報告されていて、すべての症例で効果があるとは限りません。特にFIVやFeLVに感染している場合、免疫自体が低下していますから、思うように治療効果が得られないことが多いようです。
※「ゴールデン・スタンダード」とは、多数の症例にて科学的な実証を積み重ねてきた「最良の治療」のことです。