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「協働型」MASHの利点 その1

「協働型」のMASH(仮設施設における猫の「一斉手術」)の利点について、White(2020)(https://ergovet.com/mash-clinics/)の記述から見ていきましょう。

 

協働型MASHの利点(1) 地域との関係構築

Collaborative MASH programs empower small humane organizations and shelters to host their own “Spay Days,” affording them the opportunity to enhance their community relations and outreach. The opportunity to host and assist with a MASH clinic enables staff and volunteers at host shelters to do something “fun” and different, compared to their usual shelter duties. These collaborations also allow opportunities for MASH clinic staff to share information and best practices for shelter medicine and HQHVSN with their host organizations.

協働型MASHプログラムは、小規模な動物愛護団体やシェルターが独自の「Spay Days」を主催できるようにし、地域との関係構築や支援活動を強化する機会を提供します。MASHクリニックを受け入れ支援する機会により、受け入れシェルターのスタッフとボランティアは、通常のシェルターの職務とは異なる「楽しい」経験ができます。これらの協働により、MASHクリニックのスタッフがシェルターメディスンとHQHVSN(大量・高品質の避妊去勢手術)の情報と最善の方法を受入団体と共有する機会も得られます。

 

【のらぬこの一言】

ここが協働型MASHの肝で、何度でも繰り返して主張したい利点です。スタッフを自前で用意してすべての作業を行う「独立型」MASHは、熟練者の集団がスマートに仕事をこなすことによる効率性の点では魅力的ですが、地元の人たちと協働して「泥臭く」事業を遂行する協働型MASHにはそれはそれで良さがあります。協働型MASHはコーディネートの大変さはあるものの(ここが最大のデメリットですが)、地元の人たちに「参画した経験」という大きな財産を残します。「だれかがやってくれて、めでたしめでたし」ではないのです。

協働は人と人とをつなぎます。それはMASH実施者と受入団体との間のみにとどまらず、参加した団体やボランティア同士をつなぐかもしれませんし、たまたま手伝いに来ていた他地区の人に影響を与えるかもしれません。

野良猫に係る諸問題は地域の生活環境問題としてとらえ、地元主導で対応していくべきと私は考えています。その際に、地元に猫の避妊去勢手術のリソースがなければそれを提供するという、地元に「寄り添う」活動としてのMASHが協働型MASHです。地方公務員の立場で申し上げると、「協働」は行政の大好物ですので「地域の問題を協働により解決したい」と行政機関に相談すれば、公共施設を貸してもらえたり、場合によっては公的補助が受けられたりするかもしれません。