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MASHの手術能力

MASH(仮設施設における猫の「一斉手術」)の手術能力について、White(2020)(https://ergovet.com/mash-clinics/)の記述から見ていくことにします。

 

手術能力(Surgical capacity)

Surgical capacity for a MASH clinic should be comparable to other HQHVSN models, although in many MASH clinics, only one surgery table is available, so surgical flow and resulting speed is somewhat slower than in a fully-equipped stationary clinic.  

MASHクリニックの手術能力は他のHQHVSNモデルと同等のはずですが、多くのMASHクリニックでは手術台が1台しかないため、手術の流れや結果としてのスピードは、設備の整った固定式クリニックに比べると多少遅くなります。

 

【のらぬこの一言】

手術台が複数ある固定式のスペイクリニックでは、複数の獣医師が同時進行で手術を行うこともできますし、獣医師が1人であっても空いている方の手術台で毛刈りや麻酔導入などの術前処置を施しておけば、獣医師が手術台を行き来してひたすら執刀することが可能です。MASHでは複数の手術台を設置することは不可能ではありませんが現実的ではないため、1台の手術台を用います。結果的に手術の効率は若干低下します。

Lavy先生は大規模MASHの際には「スペイボード」なる樹脂製の板を用いています。次に手術するメス猫をこのボードに仰向けに保定し、適当な作業台で術前処置を行います。そして執刀の際にはボードごと手術台に乗せます。手術の終わったメス猫はボードごと手術台から降ろされ術後処置を行います。こういったボードを用いることで、手術台が1台であっても手術効率を維持することができます。

 

However, unlike in some self-contained mobile units, physical space for animal housing need not be a limitation for MASH clinics. Approximately 5 hours of surgery time is a full day for a MASH clinic, and this may consist of as few as 15-20 dogs or as many as 50-60 cats for one veterinarian depending on surgical speed and species and sex composition of the patient load. 

しかし、自己完結型の移動診療所とは異なり、MASHクリニックでは動物を収容する物理的なスペースは制限されません。手術時間約5時間はMASHクリニックの1日であり、手術のスピードや患者の種や性別によって、1人の獣医師が担当する手術は犬15~20頭、猫50~60頭となることもあります。

 

【のらぬこの一言】

車両で全てが完結するモバイルクリニックの場合、近隣に適切な倉庫等を確保すれば別ですが、一度に預かることができる動物の数は物理的に限られてきます。それにしても5時間で猫50~60頭とは、かなりの熟練者とお見受けします(もしくはかなり優秀な看護師を雇っている?)。