MASH(仮設施設における猫の「一斉手術」)の医療手順について、White(2020)(https://ergovet.com/mash-clinics/)の記述から見ていくことにします。
手順(Protocols)
As with all HQHVSN clinics, MASH clinics should adhere to the ASV Guidelines for Spay-Neuter Programs. Surgery techniques, patient selection, and disinfection and sterilization of equipment are no different than in other HQHVSN clinics. Anesthesia and analgesia protocols are similar to those in stationary clinics, although care must be taken to select protocols that are suitable for same-day discharge of patients. As with all clinic types, proper medical record-keeping is essential, and clients must be provided with written and verbal postoperative instructions.
すべてのHQHVSNクリニックと同様に、MASHクリニックは「避妊去勢手術プログラムのASVガイドライン」に準拠する必要があります。手術技術、患者の選択、および機器の消毒と滅菌は、他のHQHVSNクリニックと同じです。麻酔と鎮痛の手順は、固定クリニックの手順と似ていますが、患者の即日退院に適した手順を選択するように注意する必要があります。すべての種類のクリニックと同様に、適切な医療記録の保持が不可欠であり、クライアントには書面および口頭での術後指示を提供する必要があります。
【のらぬこの一言】
HQHVSNとはHigh-quality, high-volume spay-neuterの略で「高品質・大量の避妊去勢手術」のことです。ASV(シェルター獣医師会)はHQHVSNを、犬や猫の過剰繁殖とそれに伴う安楽殺を防止するために、対象を絞り大量の避妊去勢手術を行う取り組みと定義しています(詳しくはこちらを参照してください)。大量の手術を行うからといって、いい加減に手術を行うことは、当然ですが許されません。そこには一定の品質の担保が必要ということで、ASVは「避妊去勢手術プログラムのASVガイドライン」(正式名称は”The Association of Shelter Veterinarians’ 2016 Veterinary Medical Care Guidelines for Spay-Neuter Programs”)を策定して、HQHVSNの際に最低限守るべき獣医療の質について定めています。MASHの際にも、このガイドラインを遵守する必要があります。
ここで注意すべき点は、野良猫の避妊去勢手術を主とするMASHの場合、麻酔や鎮痛の手順が、野良猫の即日リターンに対応している必要があることです。麻酔薬は興奮している野良猫にもしっかりと効き、かつ手術後に速やかにすっきりと醒めることが求められます。またリターン後に鎮痛剤を追加投与することは極めて困難ですから、術後鎮痛のためには1回の注射で長い間効く鎮痛剤を選択する必要があります。